「日本ニューギニア探検隊」のヤバすぎる道中 これ以上はありえない世界最悪の旅とは?
ぎゃーっ!! もう、川口浩探検隊(R35?)も真っ青である。
だが、珍道中はこれでもまだ序の口。さまざまな部族、めずらしい食べ物、想像を絶する虫の大群……ジャングルでの未知との遭遇からは、探検の興奮が生き生きと伝わってくる(けど、できれば体験したくないことも、多い)。
ところで、肝心の山はどうなったのか? その命からがらの顛末はぜひ本書を読んでみてほしいのだが、この日本ニューギニア探検隊、途中で「旧日本兵の遺骨収集」を行ったあと、なぜか唐突に「絶滅したタスマニアン・タイガー(フクロオオカミ)捜索隊」になってしまった。
植村直己さんなどからイメージされる「ストイックに目標を達成する探検」とは、あまりにもかけ離れている。違う。違いすぎる。なんかおかしいけど、それでいいのか?
結果、大学生のユースケ隊員が愛想をつかして、ひとり飛行機で帰国。じつは彼こそ、ある著名な作家の若き日の姿であったのだが、この旅はあまりに黒歴史だったのか、氏のプロフィールから省かれていた、らしい。(本書巻末には、峠さんとの対談が掲載されている。)
じつは本書は絶版になっていた『ニューギニア水平垂直航海記』(2004年)に加筆されて再び日の目を見たもので、元の本も椎名誠氏や高野秀行氏(本書では解説を担当)らに絶賛されていた。しかし今回加筆された後日談を読むと、なんと帰国してからのほうが、著者の人生は波瀾万丈だったのだ。
『ニューギニア水平垂直航海記』は、晴れやかに日本へ帰港せんというところで終わっていた。が、この直後にとんだアクシデントに見舞われたうえに、とんでもない人物が隊長を出迎えに訪れる。保証しよう、どんなに想像力豊かな小説家だろうと、絶対にこんな展開は思いつかない!
ここまでネタをてんこ盛りに披露してしまうと、「あらすじがわかっちゃったし、本は読まなくてもいいや!」と思う人もいるかもしれない。でもそんな心配は一切ご無用! ここで紹介できたことなど、本書のごくごく一部なのだから……。
国際問題にも発展しかねない行動だった
運よく生還できたからよかったものの、国際問題にもなりかねない行き当たりばったりの行動に、共感できない読者もいるはずだ。
かく言う私も発売前から予約してレビューを書こうと待ち構えていたのに、読んでみたら強烈すぎてショックで絶句。いまだに消化不良で、2カ月も放置してしまったことを、ここに告白しておく。
ただ……峠さんは望み通り、探検で「人生がひっくり返るような苦労」ができた。だからこそ、その後の「まさかの、あんなこと(本書参照)」や「信じられない、こんなこと(本書参照)」まで乗り越えることができたのだ。
「事実は小説よりも奇なり」――小説でもありえない、1行先もわからない。それが、冒険ノンフィクションの醍醐味だとしたら。これ以上「ありえない」冒険なんて、ありえない!ーーと、つくづく思う次第である。
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