初の中台会談にシンガポールが選ばれたワケ

「細心の注意」で勝ち得た、中台双方の信頼感

1965年に独立したシンガポールは、もともと反共国家で、中華人民共和国の「革命の輸出」への警戒感は強かった。

一方、台湾(中華民国)とは外交関係こそ持たないものの、1970年代から蒋経国総統とリー・クアンユー首相が親しい関係を結び、訓練地を国内に持たないシンガポール軍の訓練を台湾で受け入れる「星光計画」がスタートした。これは訓練内容などの機密性を保ちながら今日まで継続され、台湾・シンガポール関係の下支えとなっている。

逆にシンガポールは中国と、1990年にASEAN諸国のなかでも最後に外交関係を結んだ。これも華人国家として周辺の反発を招かない智慧だった。しかしその後は、中国の鄧小平が推し進めた改革開放政策へ大胆に歩調を合わせ、資金やノウハウを提供するパートナーとして大型の共同事業を手がけてきた。

1994年には「蘇州工業団地」、2008年に「天津エコシティ」の共同開発にそれぞれ乗り出した。中国西部地区の開発や「一帯一路」構想にも積極的に参与をしている。今回の習近平国家主席のシンガポール訪問では、共同開発としては3つ目となる重慶市の共同開発プランに署名している。

伏線は今年3月、リー・クアンユー氏の葬儀にあった

以上のとおり、中国と台湾の両者とこれだけ上手く付き合えている国は、ほかにはない。さらに注目すべきは、シンガポールのリー・ファミリーと、馬英九総統の親交の深さである。

中台トップ会談が実現した伏線は今年3月に行われたリー・クアンユー氏の葬儀にあった。馬総統は台湾から飛んで参加したが、出席は対外的に馬総統の帰国まで秘密にされ、中国とのトラブルを心配したシンガポール側の高い評価を得たという。リー・クアンユー氏は馬総統の対中接近路線を高く評価し、国内で厳しい批判にさらされてきた馬総統にとっては、自らに肯定的な国際発信をしてくれる頼もしい理解者だった。

今回の中台トップ会談の後、リー・クアンユー氏の息子であるリー・シェンロン首相と馬総統は、短い時間だがリラックスした対話を行っている。

台湾に戻った馬総統は、シェンロン首相に対し、「暖かいお茶と、美味しいお菓子をありがとう。やっとゆっくり座って語らうことができましたね。(中略)シンガポールはいつも台湾海峡問題で重要な役割を演じてきましたが、あなたとあなたの父がいたからこそのことです」という、心のこもった謝辞を述べている。

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