ゴルフ用の傘は置くや否や、おじいさんが黙って持ち去り、老婦人には「あら、この紙袋もらっていいかしら? 最近、いろいろいいもの出してくれて、楽しみにしてるのよ」と、声をかけていただくことも。
引っ越したマンションは、ほとんどがファミリー向けの間取りで、築50年以上。住人は年配の方が多く、毎朝エレベーターホール前では、デイサービスのお迎えを待つお年寄りたちが井戸端会議に花を咲かせる、微笑ましい光景が繰り広げられています。
都心駅チカのヴィンテージマンションに住む老紳士と老婦人なので、みなさん身なりはよく、お金に困っている人はいそうにないのですが、「まだ使えるものを手放すのはもったいない」という価値観が身についているようで、置いたそばから誰かがさっと持って行ってくれる。
使えるものを無駄にしない心意気には脱帽です。捨てるのではなく、誰かに使ってもらえる、これほど気分のいい断捨離はありません。
ゴミ置き場で繰り広げられる小さな循環社会
結局は私が手放したあれこれは、誰かしらが持ち帰ってくれたり、ゴミ捨て場の仕分け用のバケツ代わりに再利用されたりと、ほとんどが“第二の人生”を、歩むこととなりました。私のかつてのお気に入りに、価値を感じてくれる人がいるというのは嬉しい限りです。
おかげさまで捨てる罪悪感もなく、「これは、誰かがもらってくれるかな?」と、ワクワクゴミ捨て場を往復して、6畳1Kの我が家は、決して広くはないものの、ストレスがない程度には快適に暮らせる状態に整ったのでした。
新居に遊びに来てくれた友人に、このエピソードを話すと「そんな使い道のないものを持って帰る人の家って、荷物の量がすごいことになってそう」と言われ、「たしかに……」と思いつつも、「私にとってのゴミが、同じマンションに住んでいる誰かの宝物になっているかもしれない」と、前向きに考えることにしたのでした。

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