"オールドメディアだけでは不可能" 「SNS時代の万博」で顕在化した市民参加型の「日本文化」発信 「ボトムアップ型」国際交流のレガシーとは

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アステイオン103号
万博はSNSの社会的意義を強く意識させる機会ともなった(写真:reinenice/PIXTA)
2025年大阪・関西万博は、開催前の懸念を覆し、SNSによる市民視点の情報拡散と、一般参加による「ボトムアップ型」の企画によって話題を集めた。『アステイオン』103号の特集「発信する日本文化──伝統と可能性」では、この万博を契機に、日本文化の国際的な役割と課題を深掘りしている。本稿では、同特集を編集した佐伯順子氏が、日本文化の「現在地」と、現代における「国際交流」の可能性を問い直す。

SNS時代の「市民参加型」万博

184日間に及んだ2025年の大阪・関西万博(4月13日から10月13日まで)。開催前には批判的意見もあったが、会期が進むにつれて評判も高まり、終幕近くには人気パビリオンの予約はもとより、入場すら困難なほどの活況を呈した。

好評の原因のひとつは、まぎれもなくSNSの発達である。てのひらに入るスマートフォンのようなデバイスで、一般の来場者が現地から写真や動画配信をすることで、万博の市民視点のリアルな感想が拡散し、社会的関心を高めた。

上からのおしきせの知識ではなく、来場者自身が情報を流すことにより、万博会場の偽りない姿や状況が周知され、市民の有益な参考情報にもなった。

ガイドブックも出版されたが、日々刻刻と変化する会場の様子を発信するには、時間差のないSNSが有利である。

もし、かつての主流メディアであるラジオ、テレビ、新聞のみが万博の情報を提供していたのであれば、これほどの盛り上がりはなかったかもしれない。これらメディア産業は、依然として一定の信頼を維持しつつも、“オールドメディア”という表現が25年の流行語大賞候補になる時代の流れも否定できない。

逆に、ネット上の情報は、草創期には信頼度が薄いと軽視されていたものの、市民視点の情報プラットフォームとしての影響力を万博でも遺憾なく発揮した。めまぐるしく変化する現代のメディア環境にあって、万博はSNSの社会的意義を強く意識させる機会ともなった。

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