"オールドメディアだけでは不可能" 「SNS時代の万博」で顕在化した市民参加型の「日本文化」発信 「ボトムアップ型」国際交流のレガシーとは
橋爪紳也氏は、万博の日本展示の歴史を遡りつつ、1970年万博と2025年大阪・関西万博を比較し、「国威発揚型」から地球環境やSDGsを意識した「課題解決型」への万博の性格の変容を論じた。
あわせて、1970年万博における中川千代治(ビルマ戦線経験者)の平和へのメッセージ、煎茶道によるもてなしなど、世界平和の実現、日本文化紹介という、変わらぬ問題意識についても指摘している(「国際博覧会における日本文化」)。
日本文化継承と東西文化融合
研究者による論考のみならず、本特集においては、日本文化の継承に直接携わるお家元の声も伝えている。
茶道裏千家第15代家元 千玄室(鵬雲斎宗匠)氏、華道家元池坊次期家元 池坊専好氏へのインタビューにおいては、万博との関わりを含めて国内外における日本文化継承の可能性と課題が明らかになった。玄室氏へのロングインタビューを『アステイオン』に遺す非常に貴重な機会となった。
1970年万博では、堺屋太一、小松左京、梅棹忠夫など、関西を拠点にした文化人のコンセプトが活かされていたため、今回の特集では開催地の地の利をいかし、菊乃井3代目主人・村田吉弘氏を含めて、上方を拠点としてご活躍の方々の論考をそろえることを心掛けた。「和食」の世界遺産登録にも尽力した村田氏による、日本食の国際発信の重要性は、実に説得力がある(「日本料理の可能性」)。
日本文化を伝える実践のみならず、東西文化の融合への挑戦も視野に入れる必要がある。
若手作曲家・桑原ゆう氏は、浄瑠璃や能に触発された音楽を西洋由来の楽器で演奏する公演活動を精力的に行っている。和楽器と洋楽器の合奏の試みは従来も行われてきたが、どちらかがどちらかの合間に入る「アシライ」になりがちである。
だが、桑原氏の作曲は深いレベルで両者が手をとりあっており、創作者ならではの日本音楽論という意味でも珠玉の論考である(「日本音楽の本質とは」)。



















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