"オールドメディアだけでは不可能" 「SNS時代の万博」で顕在化した市民参加型の「日本文化」発信 「ボトムアップ型」国際交流のレガシーとは
華やかな海外パビリオンや著名企業の出展のみならず、一般参加の企画を幅広く結集する工夫があったことも、今回の万博の特徴であった。
市民グループや中小企業、地元の学生、生徒などによる活動紹介や発表が会場の随所で行われ、おめあてのパビリオンに入れない観客をも楽しませていた。1970年万博を知らない子供たちにとって、会場で発表をし、海外のお客様にも目をとめてもらった経験は一生の思い出になるだろう。市民参加型の活動が、会場をおおいに盛り上げていたのだ。
しかも、こうした一般参加型催事関連のイベントは、開幕前、閉幕後もあわせて、万博で生まれた絆を深めるように実施され続けている。
筆者自身、所属する大学の研究センターで開幕前から催事イベントに参加してきたため、トップダウン型ではなくボトムアップ型の今回の万博の意義を実感できた。ビフォア万博からアフター万博まで。「万博はまだ終わっていない」。いや、ネット環境のなかで、レガシーは永遠に続く。
通常授業や校務のあいまをぬって、すべてオンライン化された参加手続きをこなすのは、アナログ世代には正直容易ではなかったが、会場内で来場者の方と交流したり、その成果がAIで画像化されたりする経験は実に新鮮であった。
最新技術を有効利用し、展示者と来場者が一体となる双方向性のコミュニケーションを実現する、2025年万博ならではの新しい試みである。
1ドル360円の時代、多くの市民にとって、海外渡航は文字通り“高値の花”。海外パビリオンの展示を見学するだけでも十分に満足できた。だが、そんな1970年万博とは異なる、新たな国際交流、コミュニケーションの可能性を追求する姿が、2025年大阪・関西万博には確かにあった。
日本文化発信の機会としての万博
ただ、55年間の変化があっても、日本文化の魅力を伝える機会としての博覧会の意義は、良い意味で驚くほど変わっていない。『アステイオン』103号では、大阪・関西で開かれる2度目の大規模な国際博覧会の節目に、日本文化の国際的発信や、世界に訴求する日本文化の魅力をあらためて考える特集を組んだ。



















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