《ミドルのための実践的戦略思考》伊丹敬之の『経営戦略の論理』で読み解く化粧品・健康食品メーカーの・経理担当課長・小泉の悩み

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■解説:小泉さんはどうすべきか?

今回の小泉さんの提言は、「コスト削減のためのコールセンターのアウトソーシング」ということでした。

ただ、最初に考えたいのは、NB社のそもそもの戦略についてです。NB社は今までは限定されたセグメントの中での付加価値商品によって一定の勝ちパターンを築いてきました。しかし、今後についてはどのような戦略を描いているのでしょうか。もっと顧客基盤を広げていきたいのか。もしそうだとしたらどういう戦い方をするのか。

それとも同じセグメントの中で今の規模を維持していきたいのか。もしそうだとしたら競合が入ってきている中でどう戦いたいのか。このビジネスシステム適合の視点で述べられている最初の「有効性」(=合目的性)というところが全社的に考えられていないところに問題がありそうです。

こういう状態になると、各ビジネスシステムの利害関係者それぞれが、自分たちの立場にとって良くなるように意見を主張しはじめ、結局、本来の戦略とは無関係のところでビジネスシステムが定義される、ということが起きがちです。

例えば今回、小泉さんはコールセンターのアウトソースを提言していますが、ここに利害が絡む人、例えばコールセンター長は社員の雇用のことを考えて徹底的に反対するでしょう。こうなると、あるべき戦略とは関係なく、いかに組織のメンツを保つのか、という戦いに陥りがちです。そうならないためにも、もし小泉さんが本気でこの施策を検討するのであれば、もっと上流の「今後のNB社の戦い方」を真剣に考え、それをベースに議論を進めるべきでしょう。

もう1つ小泉さんに欠けているのは、レベル3、つまり将来の波及効果を考える、という視点です。もしNB社が今後も品質の高い商品の力で勝っていこうとするのであれば、本来コールセンターが持つ役割は大きいはずです。なぜならば、コールセンターはNB社にとって限られた貴重な顧客接点の場であり、顧客に対してブランドイメージを形成する場でもあるのです。また、顧客ニーズの獲得の場、という側面もあります。

特にNB社のように特定顧客に深く入り込み、リピートを獲得し続ける企業にとっては、不満を持っている顧客がリピーターなのかそうでないのかを把握することは重要ですし、リピーターだとしたらその人がどんな要求や質問をぶつけてきているのか、ということは何よりも貴重な情報になるはずです。もちろん、だからコールセンターを必ず抱えろ、ということではなく、そのような「見えざる資産」に対する視点も踏まえて意思決定をすることが必要、ということです。

『経営戦略の論理』では「見えざる資産」について、「金を出しても買えない」「作るのに時間がかかる」など、いくつか特徴が述べられています。これは裏を返せば、一度失ったら手に入りにくい、ものであるとも言えるでしょう。

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