《ミドルのための実践的戦略思考》伊丹敬之の『経営戦略の論理』で読み解く化粧品・健康食品メーカーの・経理担当課長・小泉の悩み
いずれにせよ、ビジネスシステムの切り出しを決める上では、各構成要素をしっかり見つめてムダが省けるところがないかを考えるとともに、全体を設計し直すことでトータルとしての効率性向上につながらないか、という視点を持ちながら考えることが必要になります。
3点目の「将来への波及効果」は、2つの観点から見る必要があります。
まずはそのビジネスシステムが将来的にどの程度、使いまわせる可能性があるか(=範囲の経済が効く可能性があるか)、ということ。例えば、自社で築いたチャネル網があれば、これを活用し別の商品やサービスを乗せることも可能になる、といった視点です。ここでは、その可能性がどれぐらい現実的なものか、そして戦略上意味があるのかを考えます。
もう1つは、企業にとっての将来的な「見えざる資産」の獲得や蓄積に寄与するか、ということです。もう少し具体的に言うと、そのビジネスシステムによって、企業にとって望ましいブランドイメージの蓄積や戦略上有効なノウハウ獲得などにどれくらいつながる可能性があるかを見極める、ということです。
ビジネスシステムを構築した結果として得られるものは当然ながら、短期的に結果が出るもの、もしくは何らかの数値という形で目に見えるものばかりではありません。狙った通りのブランドイメージの確立や、顧客からの信頼獲得、もしくは社員の技術力のように、長らく積み重ねてきたからこそ、獲得できるものもあります。ビジネスシステムを考える上では、そのような「見えざる資産」への影響も考慮に入れるべき、ということです。
以上、ビジネスシステムを設計する上での3つのレベルを追ってきました。著者が敢えて「レベル」という表現を用いているだけあり、最初の視点から最後の視点に行くにつれ、その視点の難易度が高まってきていることが感じられたかと思います。さて、それではこれらの視点に基づき、小泉さんの提言内容を見ていきましょう。