《ミドルのための実践的戦略思考》伊丹敬之の『経営戦略の論理』で読み解く化粧品・健康食品メーカーの・経理担当課長・小泉の悩み
■理論の概説:『経営戦略の論理』
『経営戦略の論理』は、一橋大学名誉教授の伊丹敬之氏によって1980年に出版された書籍です。今から30年以上も前に出された初版は、その後、増刷、改訂などを経て、今日まで経営戦略の基礎的な教科書という位置づけで読み継がれています。その内容は、「戦略の市場適合」「戦略のインターフェイス適合」「戦略の内部適合」という3部構成になっており、企業の外部環境分析から内部環境分析までのどこに偏ることもなく、広く均等に戦略を分析する視点が、豊富な事例とともに整理されています。
ここでは、本書の中で紹介されたフレームワークや視点の中から、今回の事例と関係するものをいくつかご紹介していきましょう。
まず、第2部「戦略のインターフェイス適合」に紹介されている「ビジネスシステム」についてです。なお本書では、ビジネスシステムを、「顧客を終着点として、そこに実際に製品を届けるまでに企業が行う仕事の仕組みのこと」と定義しています。
図のようにビジネスシステムを分解し、把握することにより、何かがすぐに見えてくる、というわけでは当然、ありません。大事なのは、ビジネスシステムを把握した上で、ビジネスをいかに「設計」するかということです。
具体的には、
・自分で行う仕事はどこにするか?
・他の企業に任せる仕事はどこにするか?
・その任せた仕事は自社でどうコントロールするか?
といったことを考えることが重要になってきます。ビジネスシステムというのは、それを深く考える上でのきっかけになるわけです。
ビジネスシステムで分解したからといって、ビジネスシステムのあるべき姿が見えてくるわけでもありません。それを考えるためには、とある視点が必要になってきます。本書においては、ビジネスシステムの適合性をチェックするための3つのレベルとして「有効性」、「効率性」、そして「将来への波及効果」が紹介されています。
「有効性」とは、そのビジネスシステムの目的が何であり、その目的に即したビジネスシステムになっているのか、という観点です。合目的性と言い換えてもいいかもしれません。