こうした調査データは、
「オフィス賃料が上昇していくかもしれない。増床や移転をするなら早めに行うべきだろう。検討のため、仲介会社とコンタクトしておこう」
と会社の管理部門として取り組むテーマ(購買、採用、財務など)に大きな影響を与えます。では、どのような調査データをおさえておくべきか。いくつかのデータの紹介と、会社規模に応じて押えておきたいポイントを紹介したいと思います。
「新規求人数」で見えてくるもの
景気状況を示す調査データとして、ニュースによく登場するのが有効求人倍率。厚生労働省の統計で仕事を求めている人一人あたりに何人の求人があるかを示す数値ですが、1.0を超えると人手不足傾向が出て、それだけ企業業績が上向いている証と言われます。
2015年9月の有効求人倍率は前の月から0.01ポイント上昇して1.24倍。これは1992年1月以来、23年8カ月ぶりの高水準です。なお、都道府県別では東京都が1.83倍で最も高く、最も低かったのは鹿児島県で0.86倍。
ちなみに1992年1月の日経平均株価は2.2万円。MLBの選手にまでなった松井秀喜氏が甲子園5打席連続敬遠されたことが話題になった年。また余談ですが、前職のリクルート社がダイエー社の傘下になったのもこの年。大型スーパーが隆盛を誇っていた時代でした。そう考えると、相当昔の出来事です。
そのほかに、今後の景気状況を的確に表すものとして注目して欲しいのが、新規求人数。新たに創出された求人数だけに注目することで、アクティブ(活動的)な企業の動きがよくわかります。
たとえば、千葉労働局が10月30日に発表した新規求人の産業別の状況は、和食チェーンから調理人などの大型求人があった「宿泊業、飲食サービス業」が同46・5%増、「生活関連サービス業、娯楽業」が同19・5%増、「製造業」が同18・5%増。これから業績が上がりそうな業界がどこかが、より鮮明に見えてくるのではないでしょうか。
続いて、会社業績を大きく反映する賞与支給額。経団連が10月30日に発表した大手企業の今冬のボーナスの妥結状況によると、平均で前年比3.13%増の約91万となり、3年連続で増加し、過去最高を更新しました。
今後の消費が好循環になりそうですが、それよりも注目すべきは大企業志向の転職が増えることの可能性です。あくまで経団連の数字は、東証一部に上場している従業員500人以上の245社で労使交渉が妥結した78社を集計しただけ。中小企業では支給額は20~30万くらいが普通。そもそも、支給するorしないが話題になるくらい。この格差が人材の大企業集中に拍車をかける気がしてなりません。
大企業も中小企業も人手不足、ただし待遇面の差は開くばかり。中小企業は従業員の給与やボーナスをはずむくらいの状況にはなっていないのです。さらに言えば、長年の大企業と中小企業の景気に関する恩恵の格差から
《中小企業は従業員に高い報酬を支払える時代はやってこない》
と思い込む人も多いのではないでしょうか。
この状況を示している調査データがあります。
それが、景気実感を示す調査データに日銀短観があります。日本銀行自身が調査し、直接、各企業の経営者に業況感を問うマインド調査で、サンプル数が十分にあり、回収率も高いので、数多くある経済指標の中でも特に注目されている統計です。株価や為替相場にも大きな影響を与えます。
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