続出する「SIerのコンサル挑戦」は本当にうまくいくのか 成否を分ける"重大ポイント"は?

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【4】に対応できるのは、たとえば、経営層に対して次のような会話ができる人材です。

「社長、アクティビスト対策の観点からもPBR(株価純資産倍率)を上げる必要がありますね。
となると、Aセグメントは利益拡大、Bセグメントは現状維持を前提に撤退を視野、Cセグメントを起点とした新規事業展開が方向性として考えられます。
それには、Aのコスト削減を実現するためのDXと浮いた人員の(Cセグメントへの)再配置、Bのカーブアウト(事業の売却)、Cに異動する従業員の再教育、なかでもAIによる能力向上、といった取り組みの優先度が高いのではないでしょうか」


 このような議論を経営層と交わせれば十分です。

そして、議論の中で「どのようなDXが必要か(投資総額やスケジュール含む)」を導き、自社のSIへと自然に誘導できれば、それが「強力なUPS(独自の売り)」になります。

さらに、リスク対応やプログラムマネジメントにおける“こなれ感”を示せれば、「この会社ならSI工程まで安心して任せられる」と信頼を得られ、抱き合わせ戦略が成立するでしょう。

規模が小さくても「早めに手を打つこと」が重要

もっとも、両者(SIerとコンサルファーム)にはカルチャーの違いがあり、一朝一夕でこのレベルの人材を揃えるのは容易ではありません。

現状、大手SIerでも経営層や執行役員層を含め、ここまでの議論を交わせる人材は多くありません。

しかしだからこそ、揃えにくい人材ほど早めに手を打つことが重要です。

従業員1万人規模の大手SIerであれば、まずは10名程度の「プログラムマネジャー型コンサルタント」を育成・採用し、2〜3件の重点クライアント案件から始めるのが現実的でしょう。

キャリア採用との組み合わせであれば、実現可能性は十分にあります。

2026年には、「おっ」と思わせるような――コンサルティング・ファームと大手SIer​の真っ向勝負を見てみたいものです。

大野 隆司 経営コンサルタント、ジャパン・マネジメント・コンサルタンシー・グループ合同会社代表

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おおの りゅうじ / Ryuji Ono

1986年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。アンダーセン・コンサルティングを皮切りに戦略系、デジタル・IT系、フィナンシャル・アドバイザリー系と複数の外資系コンサルティング会社にて数多くの案件を遂行。ローランド・ベルガー、KPMG FASなどでパートナーを務め2019年独立。現在はDX、イノベーション創発などのテーマにおいて、約70名の独立コンサルタントとともにチームを組成して企業支援を行う。湯河原在住。週末は自宅でドックカフェを開く。愛犬飼育管理士、わな猟狩猟免状を保有。

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