常に誰かの手を借りながら暮らしている。
それは、一般的な意味での「ひとり暮らし」とは少し違うかもしれない。けれど青木さんは、自分で介助の体制を整え、仕事を持ち、日々の生活を自分の意思で動かしている。
生活を支える訪問介護の事業所十数社と契約し、すべてのスケジュール管理や連絡を、自ら行う。この生活は紛れもなく、彼なりの自立のかたちだ。
実家は近隣にあり、父母と同病の兄との4人家族だった。兄は青木さんよりも症状が重く、10代の頃には施設に入ったこともある。その後実家で過ごし、2023年に亡くなった。そんななか、青木さんは「どうしてもひとり暮らしをしたい」と、準備期間の3年を経て2024年に、この部屋に引っ越した。
両親が健在で、同病の兄が死に至ったほどの深刻な状況なら、実家にいた方が安全という考え方もある。それでも、青木さんにはひとり暮らしにこだわる理由があった。
一生涯「自分の尊厳を守る」ための自立
青木さんの生活は、決して容易ではない。いま動かせるのは、左手首から指先、右手の指、首、口、そして目。夜は呼吸を助けるために人工呼吸器をつけて眠る。入浴や着替え、食事のたびに介助が必要で、身支度を終えるころには午前が過ぎている。
「両親も年をとってきているし、こういった生活を全部任せるのは、もう大変なんです。両親がケアできないとなると、施設に入ることになるんですが、僕はそれは避けたい。なぜなら施設では充分なケアが受けられないと感じるからです。虐待を受けるケースもある。僕と同じような症状で施設に入っていた人が、そうでした。ごはんを無理に詰め込まれたり、きつい言葉をかけられたり……そんな思いはしたくないんです」
青木さんは続けて、落ち着いた声で言った。
「体が動かない人の施設だと、ヘルパーさんひとりが10人以上も受け持っているケースがある。そうなると、ひとりひとりに手厚くするのは難しいですよね」
もちろん全ての施設で虐待があるわけではない。しかし実際に厚生労働省の調査*でも、施設で障がいがある人に対しての虐待件数が増えているとされる。その要因として「人員不足」や「職員のストレス」が指摘されており、現場負担が支援の質をゆがめてしまう現実がある。青木さんは、そうした構造的な問題を冷静に分析し、自分なりに立ち向かおうとしている。
*厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課 地域生活・発達障害者支援室『障害者虐待事例への対応状況調査結果等について』(2024年3月5日)より
「まずは自分がひとり暮らしをして、在宅介護の仕組みをつくる。その経験が、同じような状況にある人の希望になると思いました。実体験で得たノウハウを社会に還元し、24時間介護が必要な人でも、在宅で尊厳をもって暮らせる社会にしたい。
一方で、介護士の方たちの働く環境が過酷だという現実もあります。その両方を少しでも変えたいと思って、ヘルパーの派遣事業を立ち上げました。今は、この事業をきちんと軌道に乗せることが目標です」


















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