
普通の人の暮らしを捉えた伝説の写真集
現代は、SNSを開けば、あらゆる情報がある。ライフスタイルについても同様、インテリアの正解、暮らしのコツ、片づけのノウハウ。数えきれない人が発信し、「他人の暮らし」は端末のなかに無限に並んでいるかのようだ。
それにもかかわらず、30年前に刊行された、「普通の人の普通の部屋」の写真集が、いまもレジェンドであり続けている。それが『TOKYO STYLE』(都築 響一著)であり、80年代の東京のユースカルチャーを、“部屋”を軸に記録した一冊だ。
そこに収められているのは、80〜90年代の普通の若者の部屋。洗濯物や敷きっぱなしの布団まで写し込まれた、彼らの“ありのまま”の生活だ。その記録は累計10万部を超えるベストセラーとなり、現在も版を重ねている。
加えて昨年2024年にはスペイン・バルセロナの「apartamento」(アパルタメント)から愛蔵版が刊行され、30年以上を経た現在、海外でも評価され続けている。
実は2024年に東洋経済オンライン上で「だから、ひとり暮らし」の連載を始めたとき、まっさきにお手本にしたのはこの『TOKYO STYLE』だった。
なぜならそこには、現代のSNSにあふれる暮らしの断片にはない、体温や、ブレない眼差しがあったからだ。そうした強さがなければ、この時代にオールドスタイルな取材記事で、人々の心をつかむことはできないだろうと思った。
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