熱狂的なファンに愛される伝説の写真集『TOKYO STYLE』、著者・都築響一氏が語る「普通の暮らし」に宿る価値

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『TOKYO STYLE』
『TOKYO STYLE』の表紙にもなったミュージシャン志望の若者の部屋。筆者所有の『TOKYO STYLE』京都書院版第1刷(写真:筆者撮影)
都築響一さん
都築 響一(つづき・きょういち)/1956年、東京生まれ。1976~1986年『POPEYE』『BRUTUS』で現代美術や建築、都市生活を担当。1989~1992年に全102巻の『アートランダム』を刊行。1993年、自ら取材・撮影した『TOKYO STYLE』(京都書院/ちくま文庫)で注目を集め、1997年『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で木村伊兵衛写真賞を受賞。現在もロードサイドを中心に取材を続けている(撮影:今井 康一)

なぜ、『TOKYO STYLE』がそれほどまでに話題になったのだろうか? 

今ページをめくってみると、そこに収められた30年以上前の若者の部屋は、今の「SNSで見る部屋」よりもずっと雑多に感じられる。おしゃれではない、ごちゃごちゃした部屋――それが発売当初から部数を伸ばし、今でも手に取られ続ける作品になったのだ。

かっこいいライフスタイルの人なんて実は少数

都築さんは1980年代『POPEYE』や『BRUTUS』といった人気雑誌で活躍するライターであり、編集者だった。

雑誌文化が全盛の時代、誌面では「おしゃれの正解」が示され、若者たちは少しでもそれに近づこうと、購買意欲をかき立てられていた。都築さんは、おしゃれの真ん中にいて流行をつくる側だったのだ。

「当時は『〇〇スタイル』っていって、おしゃれなインテリアとかファッションを紹介する本が流行していたんです。僕もそういう本づくりに携わったりしていたんだけれど、実際はインタビュイー探しに苦労していました。

それもそのはずで、当時の雑誌がお手本として示すようなかっこいいライフスタイルの人なんて、実はごく少数だった訳です。

僕のまわりの友達を見ると、いわゆる雑誌的なお洒落ではない、狭くてごちゃごちゃしている部屋に住んでいて、それでも楽しそうに暮らしていた。

当時仕事で知り合った若い子たちと遊んでいると、外で飲んで、2軒目は誰かの狭い部屋に集まることが多かったんです。布団が敷きっぱなしで汚い場所もあったけど、そこでちんまり飲んでいると、なんだか楽しかった。

それを数部屋まわって記事にするだけなら雑誌のネタで終わってしまうけど、100事例くらい集めれば別の面白さが見えてくると思ったんです」(都築響一さん 以下の発言すべて)

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