美しいものは、なぜ美しいのか…「軽度認知障害」とともに生きる山本學が気づいた【観察の効能】

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観察し、それを言葉にすることで認知症の進行が遅らせられるという(写真はイメージです:metamorworks/PIXTA)
設計の仕事をしていた父親に、幼い頃から「ものを見ること」の大切さを叩きこまれてきたという俳優の山本學氏は、自身の「軽度認知障害」が進行するなかで、あらためて父の教えの意味を感じているといいます。
そんな山本氏が、88歳になったいま、ものを見る際に大事にしていることとはどんなことなのでしょうか。主治医の朝田隆氏との共著『老いを生ききる 軽度認知障害になった僕がいま考えていること』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

父に仕込まれた「ものをきちんと見ること」

山本 僕の父は建築の設計という仕事柄、独特の美意識を持つ人でした。そのためか、僕は幼い頃から、「人間として生きていくには、ものをきちんと見ることだよ。すべてのことは、そこから始まるんだ」と、繰り返し言われてきました。

作家の司馬遼太郎さんも同じことをおっしゃっています。

朝田 「もの」をちゃんと見て認識することが、初めの一歩だと。

山本 でも、ものを見ろと言われても、小学生だった僕は「いったい何が言いたいのかな」と困惑するしかありません。そんなある日、父が自分の飲んでいた湯吞み茶碗を僕に示して、「これ、どう思う?」と聞いてきました。

どう思う、と謎掛けみたいに言われたところで、何のことやらわかりません。困って、「これは父さんの湯吞み茶碗です」と答えたのだけど、父は何も言わず、「それじゃ駄目だ」とばかりに目で迫ってくる。

朝田 まさに、目は口ほどにものを言う、ですね。

次ページ延々と続く父からの質問
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