「子どもを叱らない時代」は大きな勘違い…教育のプロが「日本の学校はゆるすぎる」と断じる理由とは

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窪田:子どもたちが自分の生き方を見つけて変わっていく実例も多くご覧になっていると思いますが、印象的なエピソードはありますか?

『脱「学校」論:誰も取り残されない教育をつくる』
『脱「学校」論:誰も取り残されない教育をつくる』(PLANETS/第二次惑星開発委員会)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

白井:長く引きこもっていた子どもが、毎日朝5時に自発的に外出できるようになった例もありました。きっかけになったのはスマートフォン向けゲーム「ポケモン GO」です。この子は本当にずっと家から出ていなかったので、靴もサイズアウトしていて足に合うものがなかったのです。しかし、わざわざ今の自分に合った靴を購入して外出するようになったのですから驚きました。

窪田:子どもが家の中に引きこもってしまうのは、目のためにもよくありません。私も眼科医として「1日2時間は外にいてほしい」と発信していますが、ポケモン GOが外出の理由になったのですね。

「足りないこと」ではなく「できたこと」に目を向けて

白井:ここで重要なのは、その子どもが靴を買ったり外に出たりしたことを、まずはきちんと認めてあげることです。

子どもが変わり始めても、親はつい「ゲームしかしていない」とか「いつ学校に行けるのか」とか、足りないことに目を向けてしまうんです。不登校や引きこもりの子どもはとくに自己肯定感が下がっているので、こうしたマイナスの言葉には非常に敏感です。大人にとっては小さな一歩に見えても、子どもにとってはものすごく頑張った大きな一歩なのです。

窪田:親も焦っているから、ついその先を見てしまうのでしょう。せっかくの頑張りを最善策ではないように言われたらがっかりしてしまいますね。

白井:教育現場だけでなく企業で講演することも多いのですが、そんなときには、日本の大人が学校の中のことをあまりにも知らないと訴えています。通知表を見ているだけでは、わが子のことも、わが子を取り巻く環境のこともわかりません。ただ学校教育を批判するだけでなく、一人ひとりが子どもの教育に関心を持ち、未来を担う子どもたちと自分なりにどう関わっていくかを考えて選ぶことで、大人も――ひいては社会もよい方向に変わっていけるのではないでしょうか。

(構成:鈴木絢子)

白井 智子 社会起業家

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しらい ともこ / Tomoko Shirai

1972年千葉県生まれ。4~8歳までオーストラリア・シドニーで過ごす。1995年東京大学法学部卒業。同年、松下政経塾に入塾し、教育改革をテーマに国内外の教育現場を調査。内閣府や文部科学省の委員などを歴任した後、現在は株式会社こども政策シンクタンクの代表取締役をはじめ、さまざまな団体の要職を務める。近著に『脱「学校」論:誰も取り残されない教育をつくる』(PLANETS/第二次惑星開発委員会)がある。

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窪田 良 医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

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くぼた りょう / Ryo Kubota

慶應義塾大学医学部卒業。慶應大医学部客員教授、米NASA HRP研究代表者、米シンクタンクNBR理事などを歴任。虎の門病院勤務を経て米ワシントン大学助教授。2002年創薬ベンチャー・アキュセラを創業。2016年窪田製薬ホールディングスを設立し、本社を日本に移転。アキュセラを完全子会社とし、東証マザーズに再上場。「エミクススタト塩酸塩」においてスターガルト病および糖尿病網膜症への適応を目指し、米FDAからの研究費を獲得し研究開発を進めているほか、在宅医療モニタリングデバイスや、ウェアラブル近視デバイスの研究開発を行っている。

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