トヨタ自動車は13年3月期も為替リスクが利益を圧迫《ムーディーズの企業分析》
ヴァイスプレジデント シニアアナリスト 臼井 規
ここ数週間の為替は円安ぎみだが、歴史的には依然、円高水準にある。円高はトヨタ自動車(ムーディーズの格付けAa3/P1、見通しはネガティブ)に打撃を与えている。
トヨタの今2013年3月期業績は、前12年3月期比では増益となろうが、08年3月期の2兆円水準の営業利益より、少なくとも50%は低い水準にとどまる見込みだ。トヨタは高い国内生産比率の下、米国や欧州市場向けに販売を行っているため、ホンダや日産自動車に比べ、為替動向の影響を受けやすい。海外市場での値上げやコスト削減に取り組んではいるが、円高の影響を相殺しきれず、利益率を圧迫されている。
トヨタはコスト構造の調整に取り組んでいる。新工場の建設で海外生産を拡大し、海外で使う部品の現地調達比率を高めると同時に、国内生産でも輸入部品の比率を高めようとしている。しかし、こうした戦略転換の実行には時間がかかり、効果が表れるまでにさらに時間を要する。自動車の海外生産や部品の海外調達に伴って国内工場の稼働率が低下するおそれもあり、国内販売台数が増加しないかぎり非効率が生じる可能性があると、ムーディーズでは見ている。
●長期化する円高がトヨタの収益性に打撃
09年以降、円相場は対主要外国通貨で上昇を続けてきた。昨年10月には、ユーロ圏の信用危機や世界経済減速への懸念を背景に、第2次世界大戦後の最高値1ドル=75円35銭を更新した。直近は80円台まで戻しているが、円高を引き起こしうる問題が早期に解決するとは考えにくく、円高の影響が短期間で転換するとは、ムーディーズは予想していない。1ドル=80円近辺の水準では、円安とは言えないと考えている。
昨年12月、トヨタは12年3月期の収益見通しを下方修正し、理由の1つとして円高を挙げた。連結営業利益については、8月時予想の4500億円から2000億円に大幅減額した。下方修正要因のうち、1600億円が円高に直接起因したものだ。今年2月には連結営業利益見通しを2700億円に上方修正したが、それでも円高の影響額は3100億円に上り、11年3月期比では1983億円の減益となる。
図表1
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