トヨタ自動車は13年3月期も為替リスクが利益を圧迫《ムーディーズの企業分析》

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●過去の水準への利益回復は短期的には困難

円高の圧力は向こう数年にわたりトヨタの収益性を圧迫するとみられる。1ドル=76~85円近辺で推移し続ければ、海外メーカーに対するコスト競争力の足かせとなろう。

下の図表4は06年3月期以降、トヨタの営業利益に影響を与えた要因を示したものだ。06年3月期~08年3月期の高水準の利益は、円安と、販売台数、およびプロダクトミックスの改善に支えられたものであることが明らかに見て取れる。

収益性回復には、為替変動の影響を低減させ、コスト削減への取り組みを加速し、プロダクトミックスを向上し、販売台数を大幅に増やす必要がある。が、業界内の競争がますます激化し、ムーディーズが予測するマクロ経済の下方リスクが高まっている中、収益性の大幅な改善は難しい。また、円高傾向が短期的に大きく転換するとも考えにくい。

そのため、金融事業を除くトヨタの営業利益率は、向こう数年間2~5%で推移するとムーディーズは予想する。これは08年から09年にかけて起きた、景気後退の前の水準である8~9%より大幅に低い。営業利益が低水準で推移することで、キャッシュフローも引き続き圧迫されよう。たとえば11年3月期のトヨタのリテインドキャッシュフロー(RCF)は7938億円と、ピーク時の水準約2兆円を大きく下回っている。

為替リスクをコントロールする有効な施策がとられないかぎり、トヨタの利益は為替変動の影響を受けやすい状況が続き、財務内容も中期的に圧迫されるとみられる。

図表4

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