南アW杯パラグアイ戦「涙のPK失敗」から15年、あの《駒野友一》は今どこで何をしているのか

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「今はまだそういう状況に直面したことはないですけど、『迷わず蹴れ』と言うんじゃないですかね。僕自身はあのとき、岡田さんから特別な言葉はなかったけど、自信を持って蹴りに行ったし、迷って蹴るよりは自信を持ってチャレンジしたほうが先につながる。それは間違いないですからね」

大きな失敗を乗り越えた男は静かに言う。

目下、教えているユースの選手たちは南アW杯の頃は1歳前後。もちろん駒野のPK失敗の記憶はない。ただ、動画を見た選手も少なくないようで、「コーチ、あのときはどういう感じだったの?」と実際に質問されたことは何度もあったという。

「僕のサッカー人生にとって、あのPK失敗は大きな挫折。そこからはい上がる力が必要になってくると考えてやり続けました。実際、サッカーをやっていれば、失敗は誰もが経験すること。そこでどう次のアクションを起こすかが肝心。その重要性を自分は今の選手たちに伝えられるのかな。南アのPK戦のことを聞いてきた選手には『あの舞台に出られるようになれよ』と返しましたけど、ホントにその領域まで上り詰めてほしいですね」

経験値を次の成功に生かせ

PKの再現
松井大輔(右)の引退試合でPKを任された駒野(写真:筆者撮影)

駒野の言葉が子どもたちにどこまで響いているのか、気になるところ。W杯でPKを失敗した指導者の下でプレーしているのだから、「PKだけは絶対にミスしない」という名手が何人も育ってくれれば理想的だ。

「PKに関しては、本番で決めようと思うことも大事ですが、遊びでもいいから普段から何本も蹴り続けることがいちばん大切。どういう歩幅で蹴れば入るのか、ゴールキーパーの動きをどう見て、どういう駆け引きをすれば入るか、というポイントを自然と体で覚えていくと思いますから」

48カ国が参加する26年北中米W杯からは、決勝トーナメントは最大で5試合になる。頂点に至るまで5回続けてPK戦というケースも皆無とは言えないのだ。そこで、PKを失敗したことのある駒野や南野、三笘、吉田の経験値が、より重要になってくるかもしれない。

成功体験よりも失敗体験のほうが、先の成功につながるのは間違いない。次のW杯で優勝を目指す森保一監督率いる日本代表にもフィードバックしてほしいと感じた。

後編に続く、一部敬称略)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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