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テクノリバタリアンが夢見る「自由都市」の危険/その実態はCEOとアルゴリズムが統治する暗黒郷/市民権はサブスク化する

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シリコンバレーの富豪たちが「自由都市」構想を声高に叫び、右派政治家もそれに呼応している(写真:Niroa/PIXTA)

「自由都市」ほど過激な、あるいは誤解を招く売り込み言葉の政策アイデアはない。イノベーションのために規制の緩い特別区をつくり、デジタルの力で中央管理するというアイデアだ。シリコンバレーのテクノリバタリアン・エリートが支持してきたもので、最近ではトランプ米大統領をはじめとする右派政治家が取り入れるようになっている。

聞こえはいいが、その実態は「CEO支配の要塞」

お役所仕事の無駄を排除し、イノベーションに活力を与え、住宅危機を解消することを狙っているといえば、聞こえはいい。だが自由都市は、実際には富裕層のための要塞となる危険が高い。経営層が封建領主となって格差が固定化される荘園だ。自由をうたってはいても、そこでの統治は選挙で選ばれない「取締役会」に委ねられることになる。

アメリカ連邦政府の所有地で10の自由都市を立ち上げるというトランプの2023年の政策プランは、どこからともなく浮かび上がったものではない。その概念は、ノーベル賞受賞経済学者ポール・ローマーが提唱した「チャーター(憲章)都市」が知的な起源となっている。

本来は途上国で経済を刷新する手段として考案されたものだが、ベンチャー資本家らは後にこれを再解釈し、公的な監視から遮断されたスタートアップ都市を思い描くようになった。サム・アルトマン、マーク・アンドリーセン、ブライアン・アームストロング、ピーター・ティールといったIT富豪・投資家たちは、このような特区をAI(人工知能)、バイオテック、フィンテックの実験場とするべく売り込んでいる。

右派系のアメリカン・エンタープライズ研究所をはじめとするシンクタンクも、連邦政府の土地に多数の新都市をつくるよう提案。新たに設立された「自由都市連合」は、「市場が扱えるだけ多く」の建設を政権に働きかけている。

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