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〈解体された幻の博覧会〉大阪万博をも上回る"巨大プロジェクト"の遺産 時代に翻弄され続ける人工都市「臨海副都心」の数奇な運命

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青海と有明を結ぶ夢の大橋。幻に終わった都市博のメインストリートとなる予定だった(記者撮影)

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大阪湾に浮かぶ人工島、夢洲で4月13日に開幕した大阪・関西万博。開催に至るまで、整備費の膨張やパビリオン建設の遅延などをめぐり批判が相次ぎ、開幕した後もなお毀誉褒貶が分かれる状況が続いている。

東京でもバブル経済崩壊直後の30年前、同様に激しい非難にさらされ、開幕直前に中止された博覧会があった。世界の都市が抱える問題の解決や21世紀の都市づくりをテーマに据えた、「世界都市博覧会(都市博)」だ。その開催予定地が、当時まさに新しい都市の開発が進む臨海副都心だった。

地下に眠る“日本最大”のインフラ

台場、青海、有明地域から構成される臨海副都心は、2つの巨大なプロムナード(遊歩道)が街を縦横に接続する。2024年の年の瀬が迫る師走、海を隔てた青海と有明を結ぶ遊歩道上に位置する「夢の大橋」の有明側のたもとで、防音シートに覆われた施設の解体工事がひっそり進んでいた。周囲を行く人々は、特段その存在に気をとめることもなく通り過ぎていく。

解体が進められていた共同溝展示館。都市博が臨海副都心に残した“痕跡”ともいうべき存在だった(記者撮影)

建物の正体は、かつて「共同溝展示館」(渡辺誠氏設計)と呼ばれた施設。「共同溝」とは、上中下水道管、電力や通信ケーブル、ガス管に至るまで、多様なライフラインをまとめて地下に収容できるインフラを指す。実は人工都市である臨海副都心の地下には幅14m、高さ7.7m(開削部の例)、延長16.6kmに及ぶ巨大な共同溝が埋め込まれている。

過去に展示館に入った東京都の職員によると、建物内から共同溝を実際にガラス越しに見学できたという。臨海副都心の計画や設計に最初期から関わった東京都市大学名誉教授の平本一雄氏(80)は、「下水も含めたパイプを全部きちんとしたスペースの中に置いて、常時点検できるのが共同溝のメリット。未来を見据えて造られた日本最大の共同溝だった」と振り返る。広大な埋め立て地に、イチから都市を整備するがゆえに成すことができた試みだったといえよう。

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