人生の極意は「人との距離感を適切にとること」。人間関係の軋轢もハラスメントも、すべては「境界線」の引き方にかかっている

他人同士が互いを認め合い、それぞれの領域を尊重することが、生きづらさからの解放につながります(写真:msv/PIXTA)
まず白状しておくと、『心を病む力: 生きづらさから始める人生の再構築』(上谷実礼 著、東洋経済新報社)というタイトルを初めて目にしたときには、少しばかり戸惑いを感じた。
心を病んだりすることなく、可能な限り平穏な日常を過ごしたほうがいいに決まっているからだ(そんなことが気になるなんて、われながら屈折した性格だなあと思わずにはいられないが)。
ただ、この時点でひとつ気づけることがある。「可能な限り平穏な日常を過ごしたほうがいい」とは当然の発想だけれども、現実的に「可能な限り」はなかなか難しいということである。
可能にならないからこそ、人はあれこれ思い悩んだりするのだ。場合によっては精神に支障をきたしてしまうこともあるだろうが、つまり「可能な限り」はあまり可能ではないケースが多いのだ。
生きづらさ=命の声
心理学的・神経学的視点から見ると、生きづらさを感じたり心を病むということは、人生の再構築を促す「命の声」が聞こえるということなのだと著者はいう。その声が聞こえるからこそ、自分らしく生きる道を考えなおすことができるのであり、それこそが「心を病む力」だという考え方である。
生きづらさを感じ、時に「心を病む」という状態に至ることは、社会への過剰適応によって、あなたがあなたのままでいることが難しくなっていることを知らせてくれるサインです。(中略)
生きづらさを感じる力、「心を病む力」は、自然のままに、ありのままに生きられていない現状に警鐘を鳴らし、より自分のままで生きられるよう、環境との関わりを見直すきっかけを与えてくれます。つまり、社会の中で自分らしく生きようとする力と言えるのです。(38〜39ページより)
生きづらさを感じる力、「心を病む力」は、自然のままに、ありのままに生きられていない現状に警鐘を鳴らし、より自分のままで生きられるよう、環境との関わりを見直すきっかけを与えてくれます。つまり、社会の中で自分らしく生きようとする力と言えるのです。(38〜39ページより)
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