人生の極意は「人との距離感を適切にとること」。人間関係の軋轢もハラスメントも、すべては「境界線」の引き方にかかっている

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① 自分のバウンダリーを育み、見失った自分を取り戻す
② 柔軟にバウンダリーを引いて、社会との関係を再構築する
(160ページより)

大切なのは、自分を取り戻したうえで、社会と適切に関わっていくこと――。そんな順序がとても重要なのだという。それぞれを確認してみよう。

まずは①。社会や人間関係に対して過剰適応してきた人は、バウンダリーが不健全な状態だったと考えられるようだ。そこで、まずは自分のバウンダリーを「育む」ことから始めるべきだと著者は述べている。

バウンダリーは目に見えるわけでも、物理的に線が引かれているわけでもない。それは「これが自分だという感覚」に近く、「自信」と言い換えることも可能だという。自分の考え方に確信が持てれば、他者がどれだけ干渉したとしても、自分なりの感情や感覚・考え・価値観を大切にできるということだ。

それが「バウンダリーが引けている」状態であり、まずはそこを目指すことが大切なのだ。そのためには「自分の領域を大切にする=自分を大切にする」ことに取り組むことが大切。自分の身体の感覚や感情に意識を向け、「自分はなにを心地よく感じるのか」「どんなときに感情が動くのか」「どんな欲求があるのか」など、改めて自分を知ることが重要なのである。

ありのままの自分を取り戻すことができたら、次にすべきは②。他者との間にバウンダリーを柔軟に引き、「適切な距離を保ちながら、社会のなかで自分らしく生きていく」ことを目指すのだ。

心理面では、「自分と相手を大切にする」ことに取り組みます。自分と他者は違う存在であり、それぞれが大切な存在です。これを人間関係の中でどう実践していくかがカギとなります。ありのままの自分で他者と適切な距離感で関わっていくための、バウンダリーの引き方やコミュニケーションを身につけていきます。(163ページより)

「適切」と「健全」を目指す

本書を読んでいると、「適切な」「健全に」といった表現にしばしば出会う。それは、「適切であること」「健全であること」が現実的に簡単ではないからなのかもしれない。

だからこそ私たちは、そこを目指して生きていくべきなのかではないだろうか。当初はうまくいかなかったとしても、無理のない範囲で変化し続けていけば、次第に生きづらさから距離を置くことができるのだろうから。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

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