アフターコロナにより業績不振に陥っていたCG制作会社では、毎月の社員の給料を保証できないことを鑑みて、2024年の夏、全員をやむなく解雇した。
都市部に構えていたCG制作会社の事務所を自宅近くに移転し、現在は山田さんが1人で依頼を受ける。リソースが足りない場合に、その都度山田さんの方から元社員の個人事業主に発注するという形を取るようになった。
同じ頃、山田さんは以前から誘いを受けていた「大学の芸術学部の非常勤講師」の仕事も受けることに。山田さんのように実社会で通用するCGの技術や知識を教えられる講師というのは、実のところあまり多くはないそうだ。
「最初は断っていたんです。でもやってみたらすごく楽しかった。今は最低限のベーシックインカムとしてやっていますが、今はこっちの仕事をもっと増やしたいくらいです」
CGグラフィック制作、茶農家、非常勤講師。これらの仕事と子育てをどのように毎日こなしていっているのだろう。
朝8時、自宅近くまで幼稚園のバスが来るので長男を乗せ、8時半には次男を保育園に送迎する。山田さんはその足で事務所に向かい、夕方まで仕事をする。その事務所ではCG制作の仕事も、農業関係の事務処理もしているという。
17時には次男を再び迎えに行き、帰宅。今は事務所が同じ町内にあるので、以前よりもかなり動きやすくなった。
現在は育休取得中の妻が家事の大部分を担うが、その日の夕食を作る係は大体その日に決めている。
ここに加え、家業の農作業は今も父が現役で担っているが、その作業の手伝いなどが時期により発生。その合間を縫って非常勤講師の仕事もこなし、バンド活動も継続している。

50代「まだジタバタしている」
これから、まだまだ家計の支出が増えていく時期だ。資産形成というと少し違うが、と前置きをしつつ、「家業の『お茶』が自分の資産です。末っ子が大学へ行く頃、僕は70代。でも、僕の父が70代の今でも現役バリバリで働いているのを見ると『大丈夫だ』と思えるので、それが心の支えになっています」と山田さんは話す。
今は家業が「いつか、自分の子どもが就きたい仕事の選択肢の一つに入ればいいな」という思いで、ブランディングや新しい試みなどに注力していきたいと考えている。
「だから僕は、この歳になってもまだジタバタしてますよ。自分ができることを寄せ集めて、なんとかやっていってるだけなんです。でも」
自身がうつを患った経験から言えるのは、”全速力で走らなくていい”ということだ。「遠いゴールを目指す必要もない。自分が気持ち良い速度で進んでいけるスピードと距離感を掴むことが大切だったんですよね」。
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