薬も処方されたが、山田さんは薬を飲むことに強い抵抗を感じ、服薬に踏み切れなかったという。
注)これはあくまで山田さん個人の経験です。症状や治療法は人によって異なります。「うつ」と診断された場合には主治医の指導に基づき、服薬・通院など適切に治療を進めていくことが望ましいとされています。
服薬も通院もせず、自力でうつを克服することはかなり難しい。現在、山田さんは「かなり回復していると思う」自覚があるというが、どのようにして今にたどり着いたのだろう。
「お前はそんなはずじゃないだろう」という期待
山田さんは「残念ながら『こうすれば治る』というような、確実な方法は無いと思います。ただ、僕の場合は、妻や友人たちを含め、いろんな人の意見に耳を傾けてみようと思ったことがきっかけかもしれません」と語る。
山田さんの交友関係は20代から70代までと幅広い。特に、近しい関係にある人々ほど10歳以上年下の人たちばかりだという。妻を含め、彼らは山田さんのことを気遣って声をかけ続け、時には叱咤激励をすることもあった。落ち込んでいる時に、年下からの苦言に耳を傾けること自体、普通は難しいことなのではないだろうか。
「最初はもちろん、その誘いに乗る元気も、言葉に耳を貸す気力も起きませんでしたよ。でもだんだんと、みんなが言ってくれている言葉の中に共通点があることに気づいたんです」
それは、自分に向けられた「お前はそんなはずじゃないだろう」という期待だったという。プレッシャーという意味ではなく、山田さんという人間を昔から知っている人たちが寄せる「信頼」に近いものではないだろうか。実際、山田さんはその声を煩わしいとは感じず、むしろ嬉しかったそうだ。
そのことに気づいてから、山田さんは「『そんなはず』ってどういうことだろう。僕は自分自身を客観的に見ることができていなかったのかもしれない。そのためには、もっと多様な意見に触れてみた方がいいかもしれない」という考えに至った。
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