朝ドラ【あんぱん】やなせたかし、『アンパンマン』のアニメ開始も憂鬱だったワケ

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「これでは農協に悪いと思った。 たかが絵本ぐらいでそんなに影響のあるはずはないが、パンだけでは不公平と思って和食の方のファスト・フード、『おむすびまん』をつくった」

農協への配慮から、新しいキャラを作り出してしまうところに、やなせの異能ぶりを感じずにはいられない。

やなせが抱えていた大きな不安

アニメの放送から5カ月後の平成元(1989)年3月には、アンパンマンは文化庁の優秀番組賞を受賞。全国放送へと進出すると、スポンサーはつくし、絵本は何度も重版がかかるしで、アンパンマンブームが巻き起こる。長く不人気だった「アンパンマン」を諦めないでよかったと、やなせは心底思ったことだろう。

ブレイクしたときのことを、やなせはこんなふうに振り返っている。

「ぼくは既に70歳になっていた。子供の頃には想像もできなかったような年齢になった。この年になってはじめて、いくらか陽のあたる場所に登場したので気恥かしい」

平成2(1990)年6月27日には、日本漫画家協会大賞を受賞した、やなせたかし。周囲からすれば順風満帆そのものに見えたことだろう。

しかし、この頃のやなせは、常に一つの大きな不安を抱えていた。それは妻の体調である。ちょうどアンパンマンのアニメ化が進められていた頃のことだ。やなせは医師から、こんなことを告げられる。

「お気の毒ですが、奥様の生命は長くもってあと3カ月です」

病名は乳がん。肝臓にも転移していた。

(つづく)

【参考文献】
やなせたかし『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)
やなせたかし『ボクと、正義と、アンパンマン なんのために生まれて、なにをして生きるのか』(PHP研究所)
やなせたかし『何のために生まれてきたの?』(PHP研究所)
やなせたかし『アンパンマンの遺書』 (岩波現代文庫)
梯久美子『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』 (文春文庫)
真山知幸『天才を育てた親はどんな言葉をかけていたのか?』(サンマーク出版)

真山 知幸 著述家

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まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は『大器晩成列伝 遅咲きの人生には共通点があった!』( ディスカヴァー・トゥエンティワン ) 、『ひょんな偉人ランキング ―たまげた日本史』(さくら舎)。「東洋経済オンラインアワード」で、2021年にニューウェーブ賞、2024年にロングランヒット賞受賞。
X: https://twitter.com/mayama3
公式ブログ: https://note.com/mayama3/

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