まるで「粗挽き黒コショウのよう」野生動物の亡骸から無数の生物が這い出てくる恐怖――20年経っても慣れない解剖前のあの"光景"

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イヌも、散歩の際には草むらに入らせないようにしましょう。

イヌを飼っておられる方は覚えがあるでしょうが、イヌを草むらで遊ばせると高確率でマダニに取りつかれます。散歩後には必ずブラッシングを行い、マダニがいないかを目でチェックしてあげてください。

正しく恐れて対応を徹底する

人と動物に共通する感染症は、SFTS以外にも数えきれないほど存在します。

獣医病理医として動物の遺体を扱うぼくは、日常的に感染症のリスクと向き合わなくてはならず、「感染しない」「人に感染させない」「病原体を外に持ち出さない」という3点を常に意識しながら、病理解剖に臨んでいます。

前述したように、手袋・キャップ・長袖・長ズボン・白衣は必ず着用。自分の手が清潔かどうかを常に確認し、少しでも遺体に触れたら「汚染された」とみなし、消毒しないかぎりはカメラや筆記具などには決して触りません。

遺体の死因が感染症である可能性が高いと思えば、警戒度をさらに上げます。ときどき自分でも「神経質すぎるかな」と思うこともありますが、SFTSのような恐ろしい感染症に対しては、「正しく恐れ、対応を徹底する」という姿勢がやはり大切なのです。

どうかみなさんも、今回取り上げたマダニが媒介するSFTSのリスクを、自身の身近な問題と受け止めて、予防に努めてくださいね。

中村 進一 獣医師、獣医病理学専門家

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なかむらしんいち / Shinichi Nakamura

1982年生まれ。大阪府出身。岡山理科大学獣医学部獣医学科講師。獣医師、博士(獣医学)、獣医病理学専門家、毒性病理学専門家。麻布大学獣医学部卒業、同大学院博士課程修了。京都市役所、株式会社栄養・病理学研究所を経て、2022年4月より現職。イカやヒトデからアフリカゾウまで、依頼があればどんな動物でも病理解剖、病理診断している。著書に『獣医病理学者が語る 動物のからだと病気』(緑書房,2022)。

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大谷 智通 サイエンスライター、書籍編集者

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おおたに ともみち / Tomomichi Ohtani

1982年生まれ。兵庫県出身。東京大学農学部卒業。同大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻修士課程修了。同博士課程中退。出版社勤務を経て2015年2月にスタジオ大四畳半を設立し、現在に至る。農学・生命科学・理科教育・食などの分野の難解な事柄をわかりやすく伝えるサイエンスライターとして活動。主に書籍の企画・執筆・編集を行っている。著書に『増補版寄生蟲図鑑 ふしぎな世界の住人たち』(講談社)、『眠れなくなるほどキモい生き物』(集英社インターナショナル)、『ウシのげっぷを退治しろ』(旬報社)など。

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