8月下旬には、ヨルダン川西岸での新たな大規模入植地計画を決定した。対象となるのはベツレヘム、ラマラ、東エルサレムというパレスチナ国家の中心になる都市部の間にある地域だ。
3000戸の住宅を作りユダヤ人を住まわせるというのだが、実現すればヨルダン川西岸のパレスチナ自治区は完全に分断される。これまで何度も浮上していた計画だが、内外の批判が強かったため断念していた。
この計画を推し進める極右のスモトリッチ財務相は「(イスラエルとパレスチナの)二国家を作るという幻想を完全に払拭し、ユダヤ人支配を強化するための計画だ」と「パレスチナ国家つぶし」の本音を隠していない。
ヨルダン川西岸の併合論者であるスモトリッチ財務相の動きは止まらず、9月に入ると記者会見で「ヨルダン川西岸地区の82%の土地を併合する」という計画を打ち上げた。現在の占領を一段進めて完全にイスラエルの領土にすることを意味する。もちろん国連決議や国際法に明確に違反する。
ガザの強制移住計画、ヨルダン川西岸の分断と併合という強硬手段の意図は明確で、国際社会が認めているパレスチナ国家をなきものにするということだ。
パレスチナ人が多い”離れ小島的都市”を除いて併合
それにしてもスモトリッチ財務相が示した「82%」という数字は何を意味するのか。そこにはイスラエルの深い意図が隠されている。
スモトリッチ財務相は会見で、地図を示しながら併合の対象外の18%の土地を示した。それはパレスチナ人の人口が集中するラマラ、ナブルス、ジェニン、ジェリコ、ヘブロン、ベツレヘムなどの都市部で、離れ小島のように点在している。これらの都市を併合の対象にしないのは、イスラエルにとって難題である「人口統計上の脅威」を解消するためだ。
現在のイスラエルの人口は約990万人で、ユダヤ人は73%の722万人、パレスチナ人は21%の207万人となっている。そしてガザ地区とヨルダン川西岸のパレスチナ人は合計約548万人。3つの地区のパレスチナ人の人口は合計で755万人となる(日本外務省のHP)。
つまりユダヤ人とパレスチナ人の人口はほぼ同じなのだ。
したがってイスラエルがガザとヨルダン川西岸を現状のまま併合すると、イスラエルはユダヤ人とパレスチナ人の2つの民族が人口的に拮抗する国家となってしまう。これはユダヤ人にとっては悪夢でしかない。
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