伊藤忠も動かすイスラエル「大量虐殺」国際裁判 南アフリカの提訴で出た暫定措置命令の影響度

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大型ディスプレーを通じて国際司法裁判所の公判を見守る親パレスチナのデモ隊(写真:Bloomberg)

2月5日、伊藤忠商事の決算会見。質疑応答の中で、協力関係にあるイスラエル企業エルビット・システムズとの協業関係について問われた鉢村剛CFO(最高財務責任者)は、協力関係を2月中に終了することを明らかにした。

エルビット社はイスラエルの軍事企業で、ガザで戦闘が始まった昨年10月以降、工場はフル稼働状態だという。伊藤忠はエルビット社から製品を輸入し、防衛省に供給する旨の協力関係を昨年3月に結んでいた。しかしガザでの死者が増える中、軍事企業と協力する伊藤忠に対し、国内外で抗議運動が起きていた。

批判が高まる中、関係解消に踏み切った伊藤忠。決定打となったのは、1月26日に国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルに出した「暫定措置命令」だった。

ICJの「暫定措置命令」とは

昨年10月7日、パレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマスによる襲撃で1200人の死者が出たイスラエルは、ガザでの包囲と攻撃を続けている。その結果ガザでは2万8000人以上の死者が出ているうえ、封鎖状態が続く中で水や食料、医薬品の不足も続き、人道危機に陥っている。

この間国際社会では、イスラエルの行動が戦争犯罪か否かをめぐる議論が起き、国連総会ではガザでの即時停戦を求める決議案が採択された。しかし、いずれも事態の改善には繋がっていない。そんな中、「ジェノサイド(大量虐殺など集団の破壊を意図する行為)条約違反」という異なる視点でイスラエルを訴えた国がある。一見パレスチナともイスラエルとも無関係に見える、南アフリカだ。

ジェノサイド条約は、紛争下での大量虐殺を予防するための条約だ。1946年に国連総会で採択され、現在150以上の国・地域が批准している。この条約の管轄権を持つICJは、国連によって1945年にオランダ・ハーグに設立された国家間紛争を扱う司法機関だ。判決に強制力はないが、法的拘束力を持つ。

過去のケースからすると、南アフリカの訴えである「イスラエルの行動が意図的な大量虐殺かどうか」を争う裁判の最終決着は、数年先と見られる。しかし事態が急を要するため、ICJはイスラエルの行動にジェノサイドの蓋然性を認め、ジェノサイド防止に向けた複数の暫定措置命令を1月26日に出した。

暫定措置とはいえ、イスラエルの行動に対し、ジェノサイドという枠組みで法的措置が求められたのは初めてで、歴史的な出来事と言える。しかし措置命令の中には、南アフリカが1つ目の要求として挙げていた「即時停戦」が盛り込まれておらず、国内外では失望の声も上がっている。

暫定措置命令は、ガザでの戦闘にどれだけの影響力を持つのだろうか。また、なぜ南アフリカが、イスラエルを訴えたのだろうか。

次ページなぜICJは「即時停戦」に踏み込まなかったのか
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