2023年10月7日のイスラム主義組織ハマスのイスラエルに対するテロ攻撃と、イスラエルによる対ハマス掃討作戦の激化以来、ドイツをはじめヨーロッパ各国で、反ユダヤ主義の高まりがみられる。
筆者は2023年11月、ドイツ・ベルリンのユダヤ人団体、イスラム教団体の代表者らに会い、彼らが抱いている不安や現状への批判を聞いた。
「街路がハマスによる虐殺を祝う人々であふれた」
ドイツの反ユダヤ主義の研究機関「RIAS」によると、テロ攻撃から11月9日までの間、994件の反ユダヤ主義の動機に基づく事件があった。1日当たりの件数で、前年の平均の約4倍となり、内訳は深刻な暴力が3件、暴力29件、器物損壊72件、反ユダヤ主義的発言など854件だった。
公共放送ARD(12月29日付電子版)が、連邦刑事庁の集計を基に報じるところでも、テロ攻撃から12月21日までの間、反ユダヤ主義の不法行為は1100件以上。前年1年間の同様の不法行為は2874件だったことを見れば、反ユダヤ主義が急速に拡大していることは明らかだ。
「ドイツ・ユダヤ人中央評議会」は、ベルリン・ミッテ(中央)区の大きなシナゴーグ(ユダヤ教教会)のすぐ近くにある。テロ攻撃に備え、入り口前の歩道には太い鉄製の柱がコの字型に設置され、24時間警察官が警備している。
この建物内で11月29日、ダニエル・ボトマン事務局長(1984年生まれ)と、ニルス・ランゲ報道官に会った。ボトマン氏は、ドイツの反ユダヤ主義の現状について、厳しい見方を示した。
「ドイツの反ユダヤ主義は、1945年(第2次世界大戦でのナチ・ドイツの敗北)で変わったわけではない。戦後ドイツでも反ユダヤ主義は常に存在した。ただ、今回のハマスによるテロに際し、ドイツ中の街路が虐殺を祝福する人であふれた。この形は新しい質を持つものだ」
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