ドイツ「最大のタブー」を揺るがすイスラエル攻撃 ユダヤ人とイスラムの団体がそれぞれ語る懸念

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イスラム教徒中央評議会は、イスラム教団体としては初めて、アウシュヴィッツを訪問し、国内外で他宗教との対話を行ってきた、という。

イスラム教徒中央評議会のマツエク氏(2023年11月30日、ベルリン、筆者撮影)

議長のマツエク氏は、ドイツ西部アーヘン生まれ。父はシリア人、母はドイツ人。カイロでアラビア語、イスラム学、アーヘンで政治学を学んだ。1984年に発足した中央評議会に、ほぼ最初から関わってきた。2011年から議長を務めている。

マツエク氏は、「ハマスは過激主義組織であり、パレスチナ解放をその過激主義の正当化に使っている。ハマスもイスラエルの過激主義者も和平プロセスには興味がない。イツハク・ラビン元イスラエル首相の暗殺(1995年)は極右ユダヤ人によるものだった」と双方の過激主義に対して距離を置く姿勢を示す。

「ハマスはパレスチナの代表者ではない」

パレスチナ人中央評議会は、常時活動しているのは100人で、社会、文化的活動が中心であり、政治的な団体ではない、と言う。

パレスチナ人中央評議会のハッジョ氏(2023年11月21日、ベルリン、筆者撮影)

議長のハッジョ氏の両親はパレスチナ出身で、本人はシリア・ダマスカスの難民キャンプで生まれた。パキスタンで船乗りとしての訓練を受けた後、船員として世界を回ったが、30年以上前にベルリンに来てからは、建物管理会社を経営してきた。ドイツ国籍を取得している。

ハッジョ氏も、「民間人を殺害するのはテロリズムだ。そこに争いはない。民間人と罪のない人間の殺害は起きてはならず、それを批判する」と認める。「ハマスはパレスチナの代表者ではない。我々はハマスのブローカーではない。とてもじゃないがハマスの支配下で生きたくはない」とも言う。

ただ、「われわれ(パレスチナ人)は占領下にある。占領者に対する戦いがテロリズムかどうかは疑問だ。パレスチナ人は自分の土地を防衛する権利がある」と述べて、ハマスの活動に抵抗運動としての側面もあるとの認識を示した。

イスラム教団体の2人が共通して批判するのは、欧米諸国の「二重基準」だ。

マツエク氏は、「ウクライナでもガザでも、罪のない民間人が犠牲になっているが、ロシアは侵略戦争を行い、イスラエルは防衛の権利の行使と、違う扱い方をされている。ドイツはイスラエルを支持しアラブ諸国からの信頼を失っている。ドイツは政治的信頼で大きな資産を持っており、もっと活用できるはずだ。中立の立場に立ち、紛争を終わらせることに努力すべきだ」

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