
アメリカのトランプ大統領の提案をイスラエルとハマスが受け入れ、ガザ戦争は一息ついたような状況となっている。イスラエル軍による大規模な攻撃が停止され、市民への食糧支援などの活動が再開されている。
しかし、交渉当事者をはじめ誰一人としてこの平穏が長続きするとは思っていない。歓喜と礼賛の裏で、ガザ市民には依然として大きな不安や恐怖心が宿っている。
停戦合意を実現したトランプ大統領は今、絶頂の極みにいるのだろう。イスラエルを訪問し議会「クネセト」で演説し、その足でエジプトを訪れアラブ・イスラム諸国や欧州など20カ国の首脳らを前に成果を誇らしげに誇示した。
「3000年の騒乱と戦闘の後、中東に平和が訪れた」――
自己礼賛とアメリカの力の誇示、交渉に携わったウィトコフ特使やトランプ大統領の娘婿のクシュナー氏、そしてイスラエルのネタニヤフ首相ら関係者に対する賛辞や美化の言葉など、和平への具体的な道筋とは無関係な空疎な言葉が続いた。それでも2つの会場は拍手とエールであふれかえった。
和平に向けたはじめの一歩
確かに今回の停戦はトランプ大統領がいなければ実現しなかったことは間違いない。エジプトとカタールの仲介努力に対し、イスラエルとハマスは最後まで抵抗した。両者を最後に動かしたのはアメリカの圧力だった。
とはいえイスラエルとハマスが受け入れたのは、ガザ戦争を終わらせるためにトランプ大統領が提示した20項目に及ぶ大きな構想のごく一部でしかない。それでもこの計画案は、すでに死文化しているオスロ合意に代わりうる可能性を秘めている。
計画案が描く和平の道筋はいくつもの段階を経てゴールに達する。
まず停戦後にハマスが人質を全員解放する。イスラエル軍は部分的に撤退する。ここまでがいま実現しつつある。
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