ガラス細工の「ガザ停戦」…イスラエルを叱れるのはやっぱりアメリカ、「パレスチナ和平」への難路にトランプ大統領を釘付けできるか

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中東和平はガラス細工のようにちょっとしたことがきっかけですべてが破壊される可能性がある。意図的に破壊しようとする動きも出てくるかもしれない。死亡した人質の遺骨返還が難航していることが原因で、すでにハマスとイスラエルの緊張が高まっている。

ここで重要なのはトランプ大統領を筆頭に国際社会が関与し続けることだ。

ネタニヤフ首相は、9月初め、大詰めの停戦協議をしていたカタールのドーハをミサイル攻撃し交渉を中断させてしまった。激怒したトランプ大統領はネタニヤフ首相をワシントンに呼びつけて、目の前でカタールのムハンマド首相につながっている受話器を渡して謝罪させた。

またハマスの幹部と何度も直接会って、停戦案を受け入れさせたのもアメリカのウィトコフ大使とクシュナー氏だった。

いずれもアメリカを怒らせると、とんでもないことになるぞという脅しが彼らを動かしたのだろう。

飽きっぽいトランプ氏をつなぎとめる

パレスチナ問題ではイスラエルが混乱を作り、それをアメリカが追認するというパターンが続いてきたが、今回、トランプ大統領がそれを打ち壊した。それだけに今後もアメリカの役割は不可欠である。

ただトランプ大統領は飽きっぽい。特に外交問題は壁にぶつかると、すぐ目先を変えてしまう。そうさせないためには関係国の後押しが不可欠だ。

今回の計画案についてはサウジアラビアやトルコ、インドネシアなどのアラブ・イスラム諸国や英仏独など欧州主要国も支持し、アメリカに歩調を合わせた。パレスチナ問題ではあまり例のないケースだ。

ゴールである「二国家解決案」に対しては、実現性を疑う声が強い。パレスチナ国家を認めないというイスラエル政府の方針も変わっていない。

しかし、約700万人ずつのユダヤ人とパレスチナ人が、同じ地域で平和に暮らすことのできる代案はない。アメリカの関与を維持し、関係国もプレーヤーとして積極的にコミットする。それしか和平実現の道はないだろう。

薬師寺 克行 東洋大学名誉教授

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やくしじ かつゆき / Katsuyuki Yakushiji

1979年東京大学卒、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸や外務省などを担当。論説委員、月刊『論座』編集長、政治部長などを務める。2011年〜2025年に東洋大学社会学部教授。国際問題研究所客員研究員。専門は現代日本政治、日本外交。主な著書に『現代日本政治史』(有斐閣、2014年)、『激論! ナショナリズムと外交』(講談社、2014年)、『証言 民主党政権』(講談社、2012年)など。

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