ガラス細工の「ガザ停戦」…イスラエルを叱れるのはやっぱりアメリカ、「パレスチナ和平」への難路にトランプ大統領を釘付けできるか

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計画を進めるための大前提であるハマスの「武装解除」や「ガザ統治への不関与」をハマスが受け入れるのだろうか。これらはハマスという組織の完全解体を意味する。自らの解体を受け入れる交渉は想像しにくい。

今回の停戦でイスラエル軍が部分的に撤退すると、戻ってきたハマスがイスラエル軍に協力したパレスチナ人を処刑するなどの弾圧を始めている。2年に及ぶイスラエル軍の猛攻撃を受けてもハマスはまだその組織を維持しているのである。

ガザの治安を担う国際安定化部隊はだれが担うのだろうか。すでにアラブ首長国連邦など数カ国の名前が取り沙汰されている。シナリオ通りにハマスが武装解除したとしても、不満分子によるテロは続くだろう。となるとイスラエル軍に代わってアラブ諸国の兵士がハマスの残党と戦うことになる。それは現実味のない話だ。

ガザの統治を担う「パレスチナ委員会」の人材はどこにいるのだろうか。現在、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府のテクノクラートを想定しているようだが、汚職と腐敗が問題になり十分に機能していない自治政府にガザの統治を任せることのできる人材が十分にいるのだろうか。

ヨルダン川西岸は積み残し

計画案では具体的に触れていないが、ガザの復興・支援には莫大な資金が必要となる。その額は10兆円以上とも言われている。トランプ大統領はオイルマネーで潤っている湾岸諸国の資金提供を想定しているようだが、まったく具体化していない。

また計画案は、パレスチナ問題の決着に不可欠なヨルダン川西岸の問題に触れていない。この地域にはすでに70万人ものユダヤ人が入植し、パレスチナ人の居住地域は分断、寸断されている。入植地の返還は和平に不可欠であるが、イスラエル側にそんな考えはまったくない。

解決すべき課題を挙げればきりがない。これまで主要国は解決困難だとして手を出さないまま傍観してきた。その結果が今日の悲惨な状況を生み出した。であるからこそ、いま動き出した和平の道を止めるわけにはいかない。

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