「日本は、すぐに死なずに済む国なんだ…」年収5500万円から生活保護に転落した作家の"どん底での新発見"

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立花岳志さんの物語に、まだ明確なハッピーエンドは訪れていない。高齢の母の家に引っ越しをし、現在は母と同居中だが「6月末で生活保護が打ち切られた」のだ。彼はその制度に納得はしていない。

「高齢の母と同居するだけで生活保護が打ち切られてしまう、という法制度に違和感と失望を感じています。母は高齢で年金メインで生活し、僕は母と住むことになっても、急に体調がよくなり稼げるわけでもない。それでも仕組みとして保護は打ち切られるというんですから」

ただ、ひとりの命は、ひとまずつなぎとめられたと言える。

「30年ぶりに母と暮らすことで、完全な孤立から脱却できた。これから、親子のコミュニケーションの中から『何かしらの復活のきっかけをつかめるのでは』と微かな希望を持っています」

2025年3月、立花さんの体調は「その日になってみないとわからない」状態。ベッドから一日中起き上がれない日もあった(写真:筆者撮影)

社会に必要なのは「再起」できる仕組み

この転落と再生の軌跡には、いまの日本社会が直面している構造的な問いが詰まっている。

ひとたび心が折れ、働けなくなったとき──。

たとえ過去にどれほどの実績や知名度があっても、孤立と偏見が人を容赦なく追い詰める。「助けて」が言えず、「助けて」と言っても、関係が断たれる現実。これは、立花さんだけの話ではない。

現在の日本では、精神疾患の患者数が年々増加し、2023年時点で600万人を超えている(※厚生労働省:令和5年(2023年)患者調査の概況より)。

立花さんの取材を通して感じたことは「がんばれなくなった時期をどう支えるのか」、それが日本の社会の成熟度を測る指標なのではないか、ということ。

いまここに、かつて「成功者」と呼ばれた人が、そのリアルを語りつくしてくれた。声を発してくれた。だからこそ、意味がある。

「すぐに死ななくてすんだ」と語る彼の言葉は、制度を体感した人間のリアルな声だ。そしてそれは、同じように苦しむ誰かの命を、つなぎとめるかもしれない。

社会に必要なのは「再起」でき、「もう一度生きてみよう」と思える仕組みだと感じる。

この物語が、ほんの少しでもその足場を築く一助となることを願ってやまない。

【この記事の前半】
「年収5500万円から生活保護へ」元人気ブロガーが"どん底"で見た景色
斉藤 カオリ ジャーナリスト

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さいとう かおり / Kaori Saito

ジャーナリスト・魅力覚醒コーチ。見過ごされがちな当事者の声を拾い上げ、社会に伝えてきた。現場取材を軸に記事を執筆する一方「カオリ版魅力覚醒講座」などを主宰し、延べ1000名以上に「言葉を通じて自分を理解し、力を発揮する方法」を伝えている。著書に『未経験から始める しっかり稼げる おうちライターの教科書』。言葉を媒介に、人と社会を結び直す活動を続けている。公式サイト

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