ソ連人民代議員のヴィクトル・アルクスニス氏に、筆者の母親の経験をさらに語った。
──確かに日本人とロシア人やラトビア人の死生観には似たところがあると思う。第2次世界大戦後の日本人の価値観は米国流に変容させられた。生命至上主義、個人主義、合理主義だ。しかし、これは建前にすぎないと思う。僕の父も母も戦争を嫌っていた。しかし、カミカゼで特攻をした青年たちを尊敬しているし、その犠牲に感謝している。
「その気持ちはよくわかる」
靖国神社と英霊の存在
──僕が子どもの頃、母は日本キリスト教会という長老派(カルヴァン派)の教会に通っていた。この教会の牧師は、靖国神社には、参拝はもとより観光で訪れること自体よくないと指導していた。しかし、母は時々隠れて靖国神社に参拝していた。
「マサルも一緒に行ったのか」
──僕を連れては行かなかった。母は長い間、靖国神社に参拝していることについて黙っていた。僕がそれを知ったのは大学生になってからだ。母は前田高地や首里の攻防戦で、将兵たちから遺書や写真を預かった。「あなたは子どもだから、この戦争で生き残ることができるかもしれない。もし生き残ったら母に(妻や妹の場合もあった)、僕がお国のために立派に死んでいったと伝えてくれ」と伝言を託された。そして、この将兵たちは斬り込みに出撃した。
「斬り込み?」
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