娘の言葉に妙な引っかかりを覚えた
わが家の4歳の末娘。ゆっくり、ゆっくり、会話が上手になっている。そんな彼女のなかで、最近、流行っているのは、お父さんにやさしくすることだ。
「お帰り。今日も頑張ったね。肩もんであげようか?」
「のど渇いた? ビール持ってきてあげようか?」
「お肉が大きいね。切ってあげようか?」
娘のやさしさ、健やかな育ちに触れ、心が癒やされる……のだが、じつは、妙な引っかかりを覚える「もう1人の自分」がいる。
正直に言おう。してあげる、という言葉が気になるのだ。
4歳児のやさしさに難癖をつけるのは、相当、大人気ないことだが、こればっかりは学者の性(さが)、どうしても気になって辞書で調べてみることにした。
広辞苑によると、「あげる」は、動作を他の人にして「やる」という意味の丁寧表現だそうだ。じゃあ、「やる」の意味は?と思い、調べてみると、こう書いてあった。
「同等以下の者のために労を執り、恩恵を与える意を表す」
文字は恐ろしいものだ。違和感の正体が一気に可視化された気がした。そう、私は、格下に恩恵を与えてやっているという、「上からの目線」に引っかかっていたのだ。
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