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朝ドラ「あんぱん」やなせたかし、漫画がヒットせずによかったワケ 思いもよらぬ形で転がる人生にさした光

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  • 真山 知幸 伝記作家、偉人研究家、芸術修士(MFA)
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「やさしいライオン」は子どもを失った母犬ムクムクと、母を失ったライオンの赤ちゃんブルブルの交流を描いた物語だ。声はブルブル役を女優の久里千春が、ムクムク役を声優の増山江威子が担当した 。2人とも、やなせが脚本を手がけたラジオドラマでは、母子の役でおなじみだった。

ブルブルとムクムクの会話をつなぐ歌は、ボニージャックスに歌ってもらうことになった。やなせが作詞した「手のひらを太陽に」のシングルを出した男性コーラスグループだ。作曲はやなせと親交があった磯部俶が手がけている。

このラジオドラマが放送されると、リスナーから感動の声が続々と届いたという。歌を歌ったボニージャックスはこの作品をいたく気に入ったようだ。「スライドミュージカル」にして全国を回ったかと思えば、フレーベル館という出版社に作品を推薦。「やさしいライオン」が、絵本として出版されるのに一役買っている。

アニメ化して多くの賞を受賞することに

やなせにとって、大好きな人たちと一緒に作った作品だったからこそ、初めてアニメ化に挑む作品として、「やさしいライオン」を選んだのだろう。

やなせは、虫プロのアニメーターたちと一緒にスタジオでアニメーションを作成。「千夜一夜物語」での制作現場を思い出しつつ、生まれて初めて演出まで担当しながら、作品を創り上げた。

できあがってみれば、毎日映画コンクールのアニメ部門である大藤信郎賞を受賞。そればかりか、最優秀動画賞、教育映画賞など、様々な形で評価されることになった。

やなせは様々なことを手がけながらも、「自分はマンガ家だ」という意識を強く持っていた。

しかし、だからといって、もしラジオドラマの仕事を断っていれば、「やさしいライオン」は生まれなかったし、手塚治虫からのアニメのキャラクターデザインの依頼を断っていれば、「やさしいライオン」がアニメ化されることもなかった。

マンガでヒット作がなかなか出なかったことが、活動の幅を大きく広げ、結果的には大きな飛躍へとつながったといえよう。

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【「サンリオ」の前身「山梨シルクセンター」とやなせたかしの関係】

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