産業医が教える「本音で話すのが苦手」が治るヒント。自分らしく生きて「生きづらさ」から脱却するための2つの方法

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もうひとつ、今すぐできることは「相手に直接聞いてみる」ことです。産業医面談でよく聞くのは、「同僚が全然手伝ってくれないんです」「上司は私の発言が気に入らないんだと思います」「上司は忙しそうだから、相談すると迷惑だと思うんです」。

それに対して、「直接本人に聞いてみましたか?」「それ、言ってみましたか?」と聞くと、大抵は「聞いてません」「言ってません」と返ってきます。

現実にコンタクトする

相手に直接聞かずに、自分の頭の中でグルグル考えたり分析したりしていると、「自分は嫌われているんじゃないか」「自分が何か悪いことをしてしまったのではないか」などと、現実とはかけ離れたところで不安や心配をつくりだしていきます。また、考えているだけでは、自分のニーズは相手に伝わらないので、自分の希望する方向へ現実が動くことはありません。

他者や社会と適切に関わっていくためには、現実にコンタクト(接触)することが重要です。まずは五感を使って、現実世界で起きていることをしっかりと確認します。それから、相手の心の内のことは、相手に直接聞いてみるようにします。

例えば、自分の発言に対して上司からの反応がなく、「きっと気に入らなかったのだろう。あんなことを言わなければよかった」と自分を責める気持ちが湧いてきたとします。そのような場合は、まず、上司の表情を見て確認します(=視覚を使って現実とコンタクト)。

すると、それほど不機嫌そうには見えないかもしれません。次に、相手がどう思っているのかを直接聞いてみます(=コミュニケーションで現実とコンタクト)。

「今の私の発言に対してご意見あれば伺いたいのですが」と聞いてみると、「あ、ごめん。考え事してた。もう一度聞かせてくれるかな?」と返ってくるかもしれません。このようにして、自分の考えがただの妄想だったとわかれば、現実的な対応への可能性がひらけてきます。

仕事でも日常生活でも、直接聞けば1分ですむことを、あれこれ考えて自分でややこしくしてしまうことで、人間関係の悩みが生まれることが多いものです。何でも聞けばいいというわけではありませんが、相手に聞かなければわからないことは直接聞くのが一番です。それすらも聞くのを遠慮してネガティブな想像をするのは、心理的・時間的な負担が大きすぎます。

もっとも、直接聞くと「なんで聞くんだ!」と反撃してくるような相手には、「あえて聞かない」のもあなたの選択です。高圧的・威圧的な相手や、あなたの話に耳を傾けようとしない相手とは、対話を試みても自分が傷つくだけの場合もあります。

決して無理をせず、自分を守ることを優先していいのです。

上谷実礼 医学博士

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うえたに みれい / Mirei Uetani

千葉大学医学部医学科卒業。労働衛生コンサルタント(保健衛生)。公認心理師。千葉大学博士(医学)。千葉大学大学院非常勤講師。生活習慣・生き方と健康との関係に興味を持ち、社会医学系研究室で研究・教育に従事したのち、産業医として独立。のべ1万人以上の面談・カウンセリング実績。アドラー心理学・ゲシュタルト療法・ポリヴェーガル理論が専門。著書に『ミレイ先生のアドラー流“勇気づけ”保健指導』『ミレイ先生のアドラー流勇気づけメンタルヘルスサポート』(ともにメディカ出版)などがある。

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