「働かせてもらえるだけで…」「迷惑なので連絡しないで」同僚の冷たい態度を横目に、なぜ非正規雇用女性(45)は1人で会社と闘ったのか
ただ、法令違反とまではいえない季節休暇などについては、労働組合に加入していて、新しい契約書にサインを“しなかった”ユウコさんだけが従来通り取得できるという、少々いびつな結果となった。
感謝どころか…冷たい同僚の反応
彼女のキャリアをみると、就職氷河期世代は不安定な低賃金労働を強いられただけでなく、悪質企業からの搾取に遭うことも珍しくなかったことが想像できる。
ユウコさんは声を上げることで、それぞれの会社に法律を守らせてきた。その恩恵はすべての社員が受けることができた。今の職場でも、少なくとも違法な公休カットと残業代未払いは未然に防いだ。
では、同僚から感謝されたのだろうか。残念ながら答えは「ノー」だという。
ユウコさんは同僚たちに、労働組合に加入して契約を結びなおせば季節休暇も取れるはずと説明したところ、次のような言葉が返ってきた。「働かせてもらっているだけでありがたい」「労働組合は怖い」「波風を立てたくない」「今の立場を失いたくない」「迷惑なのでもう連絡しないで」――。
1人だけ契約書へのサインを拒んだことについて、「会社の了解を得ずに働くのはおかしい」「社員じゃない人を職場に迎え入れることはできない」と言われたこともあったという。結局、だれ1人労働組合には入らなかった。
ユウコさんは「『働かせてもらっているだけでありがたい』という考えは、私と同世代に多いような気がします。もっと若い世代は『嫌なら辞める』という感じ」と分析する。
一方の会社側は合併後、「業務で取り扱う一切の事項」や「業務上知り得た情報」をSNSに投稿したり、友人や家族に話したりしないこと、違反した場合は損害賠償責任を負うことなどを盛り込んだ誓約書にサインするよう、社員たちに求めてきたという。
秘密保持の対象が不当に広いという指摘は置くとしても、これにより組合加入のハードルが上がったことは間違いない。

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