「働かせてもらえるだけで…」「迷惑なので連絡しないで」同僚の冷たい態度を横目に、なぜ非正規雇用女性(45)は1人で会社と闘ったのか

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続いて飛び込んだのが、書店での仕事。読書や書店巡りが好きで「いつか本屋になりたい」という夢を抱いての転身だった。

ただ、待遇は最低賃金水準のアルバイト。朝6時から11時までは飲食店、12時から夜9時までは書店というスケジュールで働き詰めに働いた。

書店は首都圏に複数店舗を展開する会社だったが、有給休暇も取れないうえ、休日出勤の手当も払われない。ベテラン書店員も入ったばかりの学生アルバイトも同じ時給であることに「モヤっとする」こともあった。それでも、さまざまな本に出合える日々は「楽しく、飽きることがありませんでした」と振り返る。

初めて「声を上げた」日のこと

しかし、そんなユウコさんの心をへし折る出来事が起きる。

あるとき、店長から「今年は最低賃金の上げ幅が大きいから、時給上げられないよ」と言われたのだ。“最賃以下で働け”という意味である。世間話でもするかのような軽い口調だったことを覚えている。

ユウコさんは思い切って「それは、労基法(労働基準法)違反じゃないですか」と言ってみた。労働条件について物申したのは初めてだったが、愛読書の1つで、悪質企業の実態などを告発してベストセラーになった『ブラック企業』(今野晴貴著・文春新書)の内容を思い出した。「声を上げることができたのは、この本の影響が大きかったです」。

労働組合を通して“成果”を得ても、同僚の多くは冷ややかといった体験を語りながらも、ユウコさんからはユーモアと笑顔が絶えなかった。ゆるぎない信念を持つ彼女にとって、感謝されるかどうかなどはささいなことなのかもしれない(写真:編集部撮影)

結局、時給は上がったが、書店は辞めた。

「むなしくなっちゃったんです。私は最賃ももらえない人間なんだと思いながら、これ以上働き続けることはできませんでした」とユウコさん。すでに書店の労働条件はどこも似たり寄ったりであることもわかっていた。

退職と同時に「本屋になる夢」をあきらめた。

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