また、慶應高校では「選手」以外に「アナリスト」や「コーチ」など、部員に様々な役割を与えている。
2023年の優勝時に「データチーフ」として対戦校のデータ分析を担当した部員に話を聞くと、「今回の優勝にデータ面で貢献できたことで、うちの両親も喜んでくれました。自分自身としては、3年で優勝できたので、最高の高校生活だったと思っています」と語った。
高校時代サポート役に回った部員の中には、慶應義塾大に進んだのちに、大学野球部でもアナリストなどスタッフに回る若者がいる。また大学野球部に入らずに、高校野球部を指導する「学生コーチ」になる若者もいる。
慶應高野球では、伝統的に控え選手の「モチベーション維持」の仕組みができているわけだ。もちろん、これは「私学の最高峰」慶應義塾だから可能だと言うこともできる。
「高野連解体」「高校野球そのものをなくしてしまえ」の声も
ほかの私学でも野球部寮の風通しを良くするために、さまざまな配慮をしてはいる。これまでのように「野球部寮を満杯にする部員の獲得」に血道を上げるのではなく、個々の部員たちを親身になってサポートする体制を作るべきだろう。
一方、日本高野連は「暴力の温床」になっている可能性がある「野球部寮」「多すぎる部員数」について、本格的な調査を行い、改善策を立てるべきだろう。
皮肉なことに、広陵高校野球部のモットーは「一人一役全員主役」だった。暴力をふるった上級生たちも、退学に追い込まれた下級生も「自分は主役なのだ」と思っていたのだろうか?
今、高校野球はネガティブな声を浴びせられている。この事案をきっかけに「高野連解体」「高校野球そのものをなくしてしまえ」などの声も上がっている。
「球数制限」問題以来、高校野球の現状を取材している筆者は、特に若い指導者によって、多くのことが改善されつつあることを具に見てきた。こうした若い力で改革を進めるべきだろう。広陵高校の事案が、こうした現場の努力を「無」にするようなことはあってはならないと思っている。
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