広陵高校の"暴力事案"で露呈した甲子園強豪校が抱える構造的問題

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15歳から18歳という未熟な若者に、大人同様の自制心を求めるのは酷というものだ。共同生活の中で「自分が大事にされていない」「見捨てられている」と思った若者は、残念な行動に走りがちだ。これは加害者に加えて、こうした環境を作った「大人の責任」も大きい。

一方で、公立高校では野球部員数が減少し続けている。かつて甲子園に出場した名門校でも、9人の部員を集めることができず「連合チーム」を組むケースが続出している。

近年、公立校の甲子園出場は減少の一途をたどり、私学と公立の「格差」は拡大している。私学に入って3年間ベンチ外で過ごすよりも、公立に入ってレギュラーを目指すほうがよほど充実した高校生活が送れると思うが、野球少年が、充実した練習環境を完備し、あわよくば「甲子園」という私学にあこがれるのも無理はないところだ。

「私学無償化になりましたから、公立高校の野球部はさらに厳しくなるでしょう。もう公立に行く理由がなくなりましたから」。ある公立高校の指導者の弁だ。こうした「格差」も今の高校野球の現実なのだ。

慶應義塾高校野球部は部員100人超だが寮はない

部員数が100人を超える大所帯の私学でも、部員のストレスが小さい運営をしている学校もある。このコラムで紹介した慶應義塾高校がそうだ。2023年夏の甲子園で優勝し「エンジョイベースボール」というスローガンで一躍有名になった。

慶應義塾高校野球部も100人を超す部員を抱えているが、寮はない。彼らは原則として自宅から通っている。中には慶應の名声に憧れ、他地方から入学している生徒もいるが、そういう生徒は親が住宅を借りてそこから通っている。どの家庭でもできることではなく、一定の経済条件が必要な話ではあるが。

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