昭和の名作『プレイボール』
この夏も甲子園球場で高校球児たちの熱闘が繰り広げられた。猛暑の中での開催には異論もあるが、5回終了後の「クーリングタイム」のほか、今年は初の2部制(午前の第1試合のあと、夕方から第2試合をスタートする方式)も導入。頭髪も昔のように丸刈り一辺倒ではなく、時代とともに高校野球のあり方も変化している。
そんななか、高校野球を題材としたマンガもまた変化している。昭和、平成、令和、それぞれの時代の名作を読み比べてみよう。
昭和の高校野球マンガといえば、多くの人がまず『ドカベン』(水島新司/1972年~81年)を思い浮かべるだろう。高校野球史上最強の打者・山田太郎を筆頭に、クセ者・殿馬、小さな巨人・里中、悪球打ちの岩鬼など役者ぞろいの明訓高校と、これまた個性豊かなライバルチームが甲子園を舞台に大熱戦を演じる。押しも押されもせぬ昭和の名作だ。
しかし、ここではあえて地味ながら心に残る名作、ちばあきお『プレイボール』(1973年~78年)を挙げておきたい。墨谷二中野球部の奮闘を描いた『キャプテン』の初代主人公だった谷口タカオが、墨谷高校に進学したところから物語は始まる。
中学時代の無理がたたって指が曲がったままになってしまった谷口は、野球部の練習をフェンスの外から眺める日々。見かねたサッカー部主将の誘いでいったんはサッカー部に入ったものの野球への情熱は捨て切れず、結局、野球部に入り直すことになる。ボールを投げることはできなくても、打席に立てばとんでもない当たりを連発する谷口に、野球部の面々は目を丸くするのだった。
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