この夏、劇場アニメが大ヒットした『ルックバック』。原作は『チェンソーマン』で知られる藤本タツキの同名マンガで、2021年にウェブ誌「ジャンプ+」で発表されるや話題騒然となった。マンガを描くことでつながった2人の少女の運命のドラマは、トリッキーな構成と相まって創作の初期衝動を鮮やかに浮かび上がらせた。
こうした漫画家(あるいは漫画家志望者)を主人公とした“漫画家マンガ”は、2000年代以降爆発的に増えている。その歴史については拙著『漫画家の自画像』(左右社/2021年)で詳述したが、自分が身をもって知っている世界を情熱と愛情を込めて描くだけに名作が多い。そんななか、昭和を代表する漫画家マンガの金字塔が、藤子不二雄(A)(正しい表記は○にA)『まんが道』(1970年~88年にかけて断続的に連載)だ。
昭和の名作『まんが道』
『まんが道』は、富山の小学校で出会った満賀道雄(まが・みちお)と才野茂(さいの・しげる)が、漫画家をめざして奮闘する物語。言うまでもなく、藤子不二雄(A)(安孫子素雄=満賀)と藤子・F・不二雄(藤本弘=才野)の2人をモデルとした自伝的作品である。もしかしたら今の若い人は知らないかもしれないが、2人は1988年にコンビ解消するまで「藤子不二雄」のペンネームで活動していた。この“2人で1人”パターンを踏襲する漫画家マンガは多く、『ルックバック』もそのひとつだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら