昭和と令和「漫画家たちの生態」はどう変わったか 「まんが道」「バクマン。」「これ描いて死ね」

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中3になったばかりの真城最高(ましろ・もりたか/通称サイコー)は、将来の夢もなく、退屈な日々を送っていた。クラスに好きな女子はいるが言葉も交わせず、絵は得意だがそれを仕事にできるとは思っていない。そんなある日、サイコーの絵のうまさに気づいた学年一の秀才・高木秋人(たかぎ・あきと/通称シュージン)が、「俺と組んでマンガ家になってくれ」と誘ってくる。

亡くなった叔父が漫画家で、苦労を知っているサイコーは即座に却下。が、シュージンの口八丁手八丁に乗せられ、好きな女子との約束も加わり、漫画家デビューどころか「18歳までに自分たちのマンガがアニメ化されること」を目標としてバク進することになる。

この手の物語では、マンガを描くことに親が反対するのが定番だが、本作ではあっさりOKが出る。しかも、叔父の仕事場を自由に使っていいことになり、叔父の遺したネームや資料、子供にとっては高価な道具類も好きなだけ使えるという恵まれすぎた環境で、2人は大ヒット漫画家となるべく、寝る間も惜しんで創作に励む。

右も左もわからないまま情熱だけで突っ走った『まんが道』の2人とは違い『バクマン。』の2人は豊富な情報量と冷静な分析力を持っている。それでも、2人で力を合わせて作品を完成させる点は変わらない。初めての持ち込み用の作品を完成させて、「絵はいいけど俺の話がな」「話はいいけど俺の絵がな」とお互いに言い合うシーンは胸アツだ。

バクマン。
原作:大場つぐみ・漫画:小畑健『バクマン。』(集英社)ジャンプ・コミックス1巻p200-201より

作中に登場するマンガのハウツー、編集者との関係などの描写もリアルだった。『スラムダンク』を読んでバスケを始めたり、『ヒカルの碁』で囲碁を始めた少年が多数いたのと同様に、本作を読んでマンガを描き始める少年が増えたのは確実で、その少年たちはまずジャンプに投稿しただろう。そのへんの戦略も含め、さすがジャンプと言うしかない。ラブコメ要素もからめてスピーディに展開する物語は、大人にとっても読み応え十分だ。

令和の名作『これ描いて死ね』

これ描いて死ね
とよ田みのる『これ描いて死ね』(小学館)ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル1巻。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

 

令和に入っても漫画家マンガ人気は衰え知らず。多種多様な作品が登場してくるなかで、王道たる2人組パターンの名作としてご紹介したいのが、とよ田みのる『これ描いて死ね』(2021年~)である。

舞台は伊豆諸島のとある島。マンガ好きの高1女子・安海相(やすみ・あい)は、彼女にとってバイブルとも言える『ロボ太とポコ太』の作者・☆野0(ほしの・れい/長らく休筆中)が新作同人誌をコミティア(国内最大級の創作同人誌即売会)で頒布すると知り、単身本土に渡る。初めての東京に右往左往しながらもたどり着いたビッグサイト。広い会場にひしめく大勢の人々が、“自分で描いたマンガを売っている”ことに衝撃を受ける。

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