明治安田生命が実施した「恋愛・結婚に関するアンケート調査」(2023年)によれば、未婚者の約7割が「現在恋人なし」で、恋愛・交際に「あまり興味はない」「全く興味はない」という人が2割超。結婚を「無理にしなくてもいい」「したくない」人も5割を超えていた。今の若者にとって「恋愛」や「結婚」は必須のものではなくなっている。
しかし、昭和の時代、特に80年代はそうではなかった。バブル景気へと向かう浮かれた社会状況のもと、恋愛至上主義ともいえるカルチャーが街にあふれていた。「合コン」「ディスコ」「ナンパ」「サザンとユーミン」「トレンディドラマ」……。
そんなキーワードに彩られた80年代を代表する恋愛マンガの名作が、吉田まゆみ『アイドルを探せ』(1984~1987年)だった。
80年代のリアルな恋愛青春ドラマ『アイドルを探せ』
10月には連載開始40周年を記念した特集本が刊行され、初の原画展も開催される同作の主人公は、短大生の藤谷知香子(チカ)。彼女が住むアパート「清和荘」には、パワフルで明るいバスガイドの武原千明と、同じ短大に通う漫画家志望でちょっと根暗な甘露寺恵(カンロ)が住んでいた。大学のサークルのイベントで出会った岩田晃佑(素朴な好青年風)に惹かれるチカだが、ある日、中学時代の同級生で初恋の人・永江淳一(プレイボーイ風)が現れて……。
“平凡な女の子とカッコいい男の子の運命的な恋のドラマ”ではなく、タイプの違う2人の男の間で揺れ動くチカの恋愛模様をリアルに描く。画期的だったのは、ストーリー上の本命であるはずの岩田ではなく、永江のほうと初体験してしまう点だ。岩田は岩田で、故郷の幼なじみの誘惑に乗ってしまう。それでも恋人同士となるチカと岩田だが、その後もすったもんだの連続で、なかなか腰が落ち着かない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら