「高校野球マンガ」50年の大変化に納得の理由 「プレイボール」「おおきく振りかぶって」そして令和は?

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ちばあきお『プレイボール』(集英社)ジャンプ・コミックス1巻p159より

谷口が入部した時点の墨高野球部は、いつも1回戦負けの弱小チーム。部員たちも楽しく野球ができればいいというノリで、勝利への意識が薄い。そんななか始まった地区大会の1回戦で、対戦相手を事前に偵察していた谷口は、攻略法を先輩たちに伝える。最初は煙たがっていた先輩たちも、谷口のアドバイスどおりにすればそこそこ打てるし、もしかしたら勝てるかもという展開に、がぜんやる気を出し始め……。

『キャプテン』でもそうだったが、谷口の並外れた努力家ぶり、どんな強豪相手でも、どれだけ劣勢でも決してあきらめない勝利への執念がすごい。打撃での貢献はもちろん守備でもバウンド送球なら投げられるようになり、それを捕球する練習によってチームの守備力も上がるという好循環。今までなら「負けて当たり前」と思っていたナインも、谷口の熱意にあおられて、真剣に野球に向き合うようになる。

野球エリートではない、普通の高校生たちが力を合わせて勝利をめざす。もちろん魔球や秘打は出てこない。一方で、成功体験が自信とやる気につながり、短期間にめきめき力をつけるというのはままあること。墨高をナメてかかった相手が思わぬ先制パンチを食らい、そのまま立て直せずに大敗するといった番狂わせも高校野球では起こりうる。そうした点も含め、当時としては画期的かつリアルな高校野球マンガだった。

とはいえ、そこはやはり昭和のマンガ。ベースにあるのは根性論だ。誰かに強制されたわけではないが、谷口の猛練習は常軌を逸したレベル。試合ではぶっ倒れるまで投げ続ける。そもそも骨折しているのに投げ続け、しかも試合後病院にも行かなかったのが指が曲がってしまった原因というのだから何をかいわんや(その指はのちに手術で完治する)。

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