WBCが提示した野球の魅力、世界への浸透に光 第6回大会に向けてメディアが果たすべき役割
はじめに
決勝戦で日本と米国が対戦する最初の機会となった第5回WBCは、日本が3―2で米国に勝利し、3大会ぶり3度目の優勝を達成した。日本代表は、「史上最強」という前評判通りの強さを見せた。
特に、決勝戦では1点差で迎えた9回表にマイク・トラウトと大谷翔平の「エンゼルス対決」が実現し、大谷がトラウトから三振を奪って試合が決まるという劇的な終わりを迎えた。誰もがあり得ないと思った場面が実現した決勝戦は、野球の意外性を伝えるものだった。
そこで、(1)第5回WBCの意味、(2)代表選手の報じられ方、(3)優勝が日本の野球に与える影響、(4)第6回に向けた野球と放送界の関係の4点について考えていきたい。
1.WBC誕生の背景と第5回の意味
WBCが始まったとき、球界関係者の多くは驚きを隠せなかった。「野球のワールドカップ」の構想が1990年代末に初めて取り沙汰されて以来、「いずれ行いたいが、今ではない」という意見が大半を占めていたからである。
そして、2006年に第1回WBCが開催されても、米国が優勝できなかったことや米国内でのテレビ視聴率の低迷などから、「2回目はない」と、将来への展望は暗かった。
確かに、米国でのテレビ視聴率は現在でも伸び悩んだままであり、米国代表が大会を制するのは17年の第4回大会のことだった。
だが、WBCを主催するメジャーリーグベースボール(MLB)機構とMLB選手会は、絶えず大会の前途を明るく描き、「今大会も素晴らしかったが、次はもっと興奮する大会になる」「今から次の大会が楽しみだ」と説き続けた。
同機構や選手会が米国内での認知度が必ずしも高くなかったWBCの開催に固執し続ける最大の理由は、プロリーグが国際競技大会を主催するのは米国4大スポーツのなかでもMLBだけであり、世界的にも珍しいという希少性に求められる。
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