WBCが提示した野球の魅力、世界への浸透に光 第6回大会に向けてメディアが果たすべき役割
だが、野球そのものに即して考えるなら、プロ野球という頂点が高い水準を維持するためには豊かな裾野は不可欠である。そして、広い裾野からプロ野球へとピラミッド構造を持つことで初めて選手は観客が求める厳しい要求に応える技量を発揮できるのであり、少数精鋭は興行としてのプロ野球を行き詰まらせる。
その意味で、今大会の優勝は、われわれに野球の持つ魅力を改めて教える、得がたい機会となった。また、野球はしばしば「日本と米国ではメジャースポーツでも、世界的にはマイナー競技」と指摘されるものの、チェコや英国のように新たな代表が本選に進出したことは、たとえ世界的にはマイナースポーツであっても一層の発展と普及の余地を持つことを示した。
また、中継を通して同じ競技でも国や地域の違いが戦術や作戦に影響を与えていることが示された。これは、野球の多様なあり方を知るための格好の機会を提供したことになる。
もちろん、今回の優勝で野球人口が顕著に増加することはない。また、日本においてはプロ野球の各球団が積極的に取り組み、米国の場合はMLB機構を中心として行われている「幼児や児童に対する野球の普及活動」を継続的に行うのが最も確実な方法となる。
しかし、どのような想像をも上回るかたちで終わった第5回WBCは、現在野球を行っている児童や生徒だけでなく、野球のことは知っていても実際に行ったことがない層や、野球そのものに関心を持っていなかった層に対する一定の訴求力を発揮した。
球界は、こうしたまたとない機会を逃さず、改めて地道な普及策を行わなければならない。そして、競技としての野球には文化の側面があり、言葉や習慣と同様に、同じ点も異なる点もあると伝えることができるなら、それは重要で意義のある取り組みなのである。
4.第6回大会に向けた野球と放送界の関係
野球と放送という関係からWBCを見てみると、今大会の価値が改めてわかる。
日本代表の試合のテレビ中継がいずれも高視聴率を記録しただけでなく、決勝戦も平日の午前中にもかかわらず平均世帯視聴率が42.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と異例の高さとなった。また、仕事中に中継の視聴を認める企業があるなど、社会現象といっても過言ではないほど、WBCへの注目度が高まった。
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